優しい心を育むカトリック教育

2020/03/19

はなむけの言葉 「惜しむとき」

55期生79名が巣立ちました。練習もままならいまま迎えた卒業式でしたが,一人ひとりの凛とした姿は伝統と誇りを自覚した姿でした。はなむけの言葉の概要です。

 

【感謝】

前日の春の日差しを感じた晴天と違い,雨の卒業式となりましたが、雨はあらゆる生き物にとって,命を育むために,必要不可欠なものです。命の息吹を準備する為になくてはならないものです。

 

 

皆さん一人一人の存在のように,なくてはならないことを教えてくれている今日の雨です。

 

一人ひとりが業証書を受け取る顔は,少し緊張していますが,新しい門出にふさわしいはつらつとしています。今までの生活を振り返ってみると,熱をだし学校を休んだ時,インフルエンザに罹った時,わがことのように心配し,寝ずの看病をしてくださった方は,今,皆さんの後ろ姿を見て感慨無量の思いに浸っておられます。幼かったとき,駄々をこねて学校に行きたくないと言ったとき,心を痛ませ,悩まれたのは,今皆さんの後ろから,その姿に胸を熱くしておられる方です。

 

泣いて帰って来た時,胸を痛ませ心配し,何があったのかと不安で,いたたまれない気持ちであなたたちを見守って下さった方は,今あなた方の後ろから,万感の思いであなたを見ておられます。

 

ご両親の豊かな愛に,深い愛情に包まれて育った卒業生の皆さんが活躍を始める10年先の世界は,何が必要になっているのでしょう。

 

【期待】

これからの社会は,これまでにはない人間観や自然観を持つことが必要です。人間の利益の為なら少々自然を犠牲にしてもよい,多少破壊してよいと言う考えは,捨て去らなければなりません。先端的な科学技術にすべてを依存するのではなく,地球規模で考え,開発し,時には時代遅れと見られてきた古の考え方を拾い集めて未来を見つめ直すことも重要になるでしょう。

 

皆さんが活躍する未来社会は,情報技術やコミュニケーション技術がさらに発展し,いつでもどこでも,簡単に知識を,情報を得るネットワークがさらに発展するでしょう。AIが大半のことを成し遂げるようになるでしょう。快適で心地よい世界になるでしょう。しかし,社会を先導するイノベーションは科学技術だけでなく,人類が蓄積してきた知識と共に崇高な人間観が必要です。国々と言う考え方から,私たちは同じ地球人だと考えるダイナミックな思考が必要不可欠です。

 

地球の資源は有限であり,人間が発展する道には限界があることがやっと世界の人々の共通理念となりました。日本の産業界もパリ協定でうたわれたSDGs(持続可能な開発目標)を基に企業倫理や戦略を掲げるようになりました。これからの社会には,地球規模で生物の多様性や人間社会を広く深くとらえる思考力が不可欠になります。

 

【共生】

人間とは何かと考える時,地球は人間のためであり,動物の為でもあり,植物の為でもあるのです。つまり,地球に生きるすべての生き物と共存する。共に生きていくのだと言う「共生」の考えを持って欲しいと願っています。今日読まれた聖書の中に地球規模の思考力の鍵が含まれています。それは人間が持っている「愛する」行為です。

 

◎あらゆる言葉や,御使たちの言葉を語っても,愛がなければやかましい鐘や騒がしい銅鑼と同じである。

◎あらゆる奥義とあらゆる知識とに通じていても,愛がなければ無に等しい。

◎山を移すほどの強い信仰があっても,愛がなければ無に等しい。

◎自分の全財産を人に施しても,愛がなければ無に等しい。

◎自分のからだを焼かれるために渡しても,愛がなければいっさいは無益である。

◎愛は寛容であり,愛は情け深い。また,ねたむことをしない。愛は高ぶらない,誇らない,不作法をしない,自分の利益を求めない,いらだたない,恨みをいだかない。不義を喜ばないで真理を喜ぶ。

◎愛は,すべてを忍び,すべてを信じ,すべてを望み,すべてを耐える。

◎愛はいつまでも絶えることがない。愛は決して滅びない,いつまでも存続するものは,「信仰と希望と愛」この三つである。このうちで最も大いなるもの大切なものは,「愛」である。

 

【未来】

皆さんは,豊かな愛に包まれて抱かれて育ってきました。しかし,六年間の生活の中には,悲しみや,苦しみがあり,誰にも見せない涙もあったでしょう。今,人生の一つの区切りの時を迎えました。保護のもとを巣立ち,これからは自らの力で解決するときが来ました。あなたたちなら自ら解決することができます。

その知恵と,力と,心は、賢明学院小学校で学びました。

 

困難に立ち向かうとき,もしも一人では解決できなくなった時,皆さんにはこの素晴らしい友達がいるでしょう。この賢明学院小学校に帰ってくればいいのです。ここには,あなたたちのことを心配し,食い入るようにあなたたちの成長を見守り,心にとめている先生がたおられます。

 

賢明学院で学んだことを心の糧として,未来へ力づよく羽ばたいて下さい。

皆さんが,将来地球規模で活躍なさること,そして「祈れ・学べ・奉仕せよ」の教えのもとに,しっかりと飛び立たれることを祈って,はなむけの言葉といたします。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫