優しい心を育むカトリック教育

2017/05/17

風かおりて

2017年5月17日(水)

 

『あお葉 わか葉に 風かおりて せせらぎに聞く 奇(く)しき調べ
木かげに立てる とわのみ母 みもとに行き 我ら憩わん』

 

gakuintyo-20170517

 

五月は聖母月,子どもの頃マリア様を讃える月として,ロザリオの祈りを捧げたり,この聖歌を歌った。

実際,あお葉に香はないと思うが,この聖歌は五月の青空やすがすがしい風を表現したものだろう。

 

風薫るを「薫風」と書き,音読みで「クンプウ」と読むと,リズム感はあるが,何かしら和風とは違う気がする。爽やかな風を感じさせる訓読みの「かぜかおる」の表現だと優しい感じになり、情緒的な表現と感じる。五月に吹く風には「風の香」や「南薫(なんくん)」という言い方もあるそうだ。

 

卯月,菜種梅雨(穀雨)によって全ての穀物(百穀)や田畑を潤し,穀物の成長を助ける時季が過ぎて,立夏が来た。立秋の前日まで暦の上では夏と言われ,山々には緑が目立ち、夏の気配を感じ始める今日この頃である。こいのぼりがひときわ空の青さを演出し,希望を感じる季節となった。子どもの頃はこの時期になると,はや夏休みが待ち遠しくなり、早く暑くなれと願った。私は,子どもの頃の期待にあふれるこの時期が好きだ。

 

若葉は風に香るのかと,この聖歌が発端となって,遠い昔に議論したことを思い出した。調べてみると木の芽(山椒の若芽)などは別として、若葉は実際にはあまり匂わないということが解った。柿若葉、椎若葉、欅の若葉、若楓等が俳句に詠まれる若葉だが,このどれを試してみても匂いはなく,風と共に香るようなものでもない。しかし樟若葉は時として独特の香りを漂わせるそうだが,気がついたことはない。これは嗅覚ではなく,視覚を通して感じる香りなのだろうから,新鮮さを感じると思えばいいのだろう。

 

目に青葉 山ほととぎす 初がつを」 山口素堂(江戸時代初期の俳人)

 桜が散ったと思ったら、もう青々とした目が洗われるような新緑の季節になり,おいしい鰹の季節になった。なんでも食べ物に繋げて想像してしまうのは初老の身には楽しみの一つだが,目で味わい,爽やかさを肌で味わい,舌で鰹を味わえるこの良い季節を,五感で味わい楽しみたい。子どもたちには青空の下で,また緑の中で,思いっきり遊び,柏餅を粽を味わい,自然の営みを謳歌しながら季節を学んでほしい。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫