優しい心を育むカトリック教育

2017/05/24

2017年5月24日(水)

 

みなさんには,気になる木があるだろうか?

 

私の気になる木は,七島八島湿原から車山へ向かう途中に佇んでいる。足下に水芭蕉を見ながら七島八島湿原を抜け,広大な草原に出て一時間ほど歩くとこの木に出合う。広大な草原の中に佇むこの木は,遠くから眺めるのに適している。この木は草原の中に一本,凛として立っている。草原の中に佇む姿は,私にとって癒しであり,希望を与えてくれる木となっている。

 

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しかし私は,この木に近づいたことは一度もない。ただ車山を目指して歩くとき,遠くから眺めるだけではあるが,その木を見るたびに,安らぎと勇気を戴いている。何百年前からそこに佇んでいるのかという疑問や,その木の名前などは全く気にならない。草原の中の,その木の立ち姿そのものが,安らぎと勇気をもたらしてくれ,そのことのみが私の心を豊かにしてくれる。霧ヶ峰特有の霧の中にある木の佇まいも良い。また,青空を背に佇む木の姿も良い。そして真冬,雪の中に佇む姿にも趣がある。

 

高速道路や列車や電車で移動することが多い日々,移動にかかる時間が速ければ速いほど良いとされている昨今,次々と高速道路網が充実し,日進月歩で便利になっている今日この頃にこそ,気になる木を子どもたちに見つけてほしいと私は思う。

 

桜便りが伝わり始めたころ,自分の開花標準木を決めておられる方が案外多いことに驚いた。「今年の桜は遅いですよ」と言われる御仁は,学院の桜の木を開花の標準木とされているようだ。私の気になる木,つまりいつも気にしている木,それはちょっとした変化にでも気付く心を育て,その木を通して自然に対する優しさを身に着けていくのではないだろうか。

 

毎日通う道で,毎日出合う木に心を向けてほしい。好きになってほしい。私の標準木を持ってほしい。

 

自然との交流は,こんなところからも始まるのではないだろうか。

 

【車山】日本百名山霧ヶ峰の主峰。標高1,925m。

    5月中旬から高原の中には様々な花が咲き始め,高山植物の花畑としても有名。

 

五月 

キジムシロやショウジョウバカマなどが春の訪れを告げ、座禅草(達磨草)が顔をのぞかせ,各種の

スミレやスズランなど小さな花が可憐に咲きます。

 

六月 

抜けるような青空の下、若々しい緑に覆われた春の草原には、真っ赤なレンゲツツジが咲き誇り

ます。

 

初夏 

テガタチドリ・イブキトラノオ・シシウド・ノハナショウブ・ニガナ・ハナチダケサシ・

フシグロセンノウ・ノコギリソウ・エゾカワラナデシコ・オオヨモギ・イタドリ・オミナエシ・

シラヤマギク・サラシナショウマなどが咲き,花畑が広がります。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫