優しい心を育むカトリック教育

2017/07/18

期末

 

2017年7月18日 

 

学期末が近づくと朝の車内は,問題集や教科書を手にした姿の生徒たちが目立つ。自分も経験してきた事だから生徒たちのこの姿を見ると懐かしく思う。懐かしく思うと同時に,過ぎ去った学生生活において,学年末試験を含むと定期試験は通算18回も経験したことになる。今更だが,もっとうまく試験準備をすればよかったと,後悔の念がある。

 

私は,試験が近づくと全ての教科の試験範囲をレポート用紙にまとめなおし,それを覚えていくというORTHODOXな準備をしていた。しかしこれは時間のかかる学習方法なので,何か他にいい方法はないかと悩んでいた,そんな時,そんなに勉強している様子もないのだが,成績が結構いい友人が,席替えで隣の席になった。彼は校内外で有名なサッカー選手で高校になってからもクラブで活躍し,文武両道で教科の成績もかなり良かった。試験前になると,私がまとめたレポートを見せてくれとせがむので,渋々私の労作を見せていた事を覚えている。彼は,私の労作を五分程度見るだけなのだが,結構いい成績を収めるのが不思議だった。

 

たしか,高校2年の二学期の試験前だったと記憶しているが,試験前にはどんな準備をするのかという話になり,彼は自身の方法を私に披露してくれた。それは,レポート用紙半分程度の紙十数枚にメモられたカードだった。「こんなカード何時作っていたんだ」と尋ねると,毎日クラブが終わってから,授業の内容で覚えていることを,このカードに一教科一枚と決め,まとめていたそうだ。その日の記憶だからまとめていた内容は,的を得たものだった。さっそく私も試してみたが,『毎日,その日のことをその日にしてしまう』ということは,わかっているけれど毎日というのが難しかった。しかし,習ったことを一からまとめ直すという時間のかかる学習方法から脱出できたことは間違いなかった。

 

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覚える方法・まとめる方法・記録を取る方法など,勉強にも仕事にも各自の方法があると思う。この方法一つひとつが,個性ではないだろうか。他人を羨むのではなく,自分の知恵と他人の知恵が重なれば,いろいろな場で最上の方法が生まれるのではないだろうか。他人がやっていることを倣いながら,自分の中での最善の方法を生徒たちが見つけてくれることを期待する。方法さえ見つかれば,その方法で邁進すればいいのではないだろうか。時間がかかる人も,そうでない人もいる。これは個性であって,優劣ではない。自分の方法を見つけて邁進しようと,若者たちに呼びかけたい。

 

『時の流れによって,たくさんの経験が積み重なってきました。

歳月がありがたいのは,今まで起こったことで無駄なものは一つもないと,思えるようになることです。

生きてきた歳月の実りを刈りいれましょう』

年を重ねるほど知恵を深めるセラピー から

 

著 者 Carol Ann Morrow キャロル・アン・モロー

アメリカインディアナ州のフランシスコ会の協賛会員。オハイオ州シンシナティ在住

 

翻 訳 目黒摩天雄 めぐろ まてお

上智大学で哲学・神学を学び,大阪市立大学で仏文学を研究。大学・短期大学・高等学校・

中学校・小学校に勤務。校長職や宗教科の授業を担当する。

賢明学院小学校名誉校長・宗教科教員養成所所長を歴任。大阪府在住。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫