優しい心を育むカトリック教育

2017/09/02

虫の声

 

2017年9月2日 

 

そういえばいつでもどこでも聞くことが出来た虫の声はいつ頃から聞かなくなったのだろうか。 子どもの頃,蝉取りと同じように近くの長居公園に出かけ,手づかみで袋いっぱいにコオロギを捕まえ,家に持って帰って庭に離したものだったが,あのたくさんいたコオロギたちは,今,どこにいるのだろうか。 処暑(しょしょ)と言われる二十四節気の日が過ぎても,夏の蒸し暑さは峠を越さないし,草むらにいるだろう虫たちも鳴き始めない。夕方には涼やかな風を感じ,確実に秋の気配が訪れていた季節は日本から去ってしまったように感じられる。

 

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書物によると,日本人は古くから虫の声に美を感じ,耳をそば立ててきていたらしい。江戸時代には縁日でいろいろな虫が虫かごに入れて売られ,音色を楽しんだと書かれている。真夏には,コオロギは昼間が暑いので夜に鳴くが、秋ともなると昼も夜も鳴き、晩秋になると気温が下がるので夜は鳴かなくなり,かろうじて昼間だけ鳴くようになる。

 

日本で虫の声と称するこの優雅な情緒を,雑音にしか聞こえないと言っている欧米人にどのように伝えればいいのかということと同じように,日本に生まれ,国際化の必要に迫られている子どもたちに,日本の文化を虫の声を聴くという一つの体験を通して伝えていければと思う。情緒というものは,書物やInternetの検索では見つからないし,伝わることもないものだと思っている。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫