2017/09/19
教師として生涯を貫いている先輩は多い。退職なされ教育の場を離れられても教え子たちは恩師のもとに集い教えを請うし,教え子たちは今も恩師の教えに基づいて生活している。それは,先生自身の考えや生き方に教え子たちが共感したり畏敬の念を感じたりしているからであろう。
今年の夏,賢明学院に長らく奉職され今は母国に帰国なさっておられる一人のシスターと出会えた。私のカナダ訪問は二回目になるので,以前にもお会いしたことがあるが,今回改めて教育者としての姿勢を貫いておられる姿を目の当たりにした。賢明の生徒たちの訪問の為に,Canadaの修道院の年老いたシスター方は案内のグループ分けをされ,色別の案内の旗を作られ,遠く離れていた家族を迎えるように生徒たちを迎え入れて下さった。滞在時間が限られているので,各グループ全てがコースを変えて施設の見学ができるようにシステム化された見事な計画と,一人ひとりの生徒を気遣って下さる暖かさを,生徒たちは身近に感じただろうし一生忘れないと思った。人を迎える時はこのようにすると良いと,学んでくれたのではないだろうか。華々しい歓迎の幕もメッセージも掲げてはいない。しかし,案内役を務めて下さるお一人お一人が,慈しみに満ち微笑みながら話し,修道院内を案内して下さる。生徒の片言の英語にも真剣に耳を傾け,ゆっくりと生徒が聞き取れるように話して下さる。
「おもてなし」とはシスター方のように,真心が伝わる事だと確信した。大歓迎で迎えてくださったシスター方の中に賢明学院で英語の先生をしておられたシスター・クレアの元気な姿があった,「あなたたちは,必ず一人ひとりが別々の才能を持っています。その才能をMary Riverの教育を実践している賢明で開花させなさい。Mary Riverが教えたイエスの心を受け継ぎなさい。」と生徒たちに熱き思いを語られた。英語で生徒たちに話されたのだが,シスターの生徒たちへの願いと思いは皆の中に理解できたはずだ。現場を離れて20年近く経たれるが,賢明学院への思いと,先生としての生徒へのまなざしは現役の姿であった。退職されても教育に対する熱き思いを持ち続けておられるシスター・クレアのお姿は,教師のあるべき姿を生きざまとして我々に示してくださったと感じた。
「ストラスブール大学の歌」という詩の一節。訳者によって言葉は異なる。
教えとは 希望を心にいだくこと
学ぶとは誠を胸にきざむこと
『祖国のなかの異国にて アラゴン詩集』世界抵抗詩選刊行会訳
教えるとは 希望を語ること
学ぶとは誠実を胸にきざむこと
『アラゴン選集Ⅱ』大島博光ほか訳
Louis Aragon ルイ アラゴン 別名コレール
生誕 1897年10月3日
帰天 1982年12月24日
フランスの詩人,小説家。
1919年スーポーやブルトンと雑誌「文学」を創刊し、ダダ運動で活躍する。ついでシュルレアリスムの文学運動のメンバーの一人として反逆の文学の創造、文学革命に身を投じた。
(Mother Teresa)の祈りより
学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫