優しい心を育むカトリック教育

2018/02/02

ついな 「追儺」

会議が終わり,ふと気が付けば,時計が六時を回っていることがしばしばある。夕刻なのにまだ空が明るいので,私の中の時間の感覚が冬至の頃のままなのだろうか,少々ずれているように感じる。時計を確かめて,夕刻の窓の外が一ヶ月前に比べると随分明るくなったと気付く,今日この頃である。

 

調べてみると,12月2日の日の入りは午後4時47分で,今月2月2日の日の入りは午後5時28分になっている。小一時間ほど,日没が遅く変化しているのだ。一日単位の変化には気が付かなくても,毎日の少しの変化が積み重なって,明らかに感じとれるようになってきている。自然の営みってすごいなと感じ,季節は確実に動いていると知らされる。

 

「節分」がこの時期にあるのは,季節の変化を体感できる時期だからだろう。

 

gakuintyo-20180202

 

暦を見ると,「季節を分ける」節日として,立春・立夏・立秋・立冬のそれぞれの前日に節分があり,1年の内には4回ある。立春を1年のはじまりとする暦の考えでは,節分は大晦日(おおみそか)にあたる。平安時代の宮中では,旧年の厄や災難を祓い清める「追儺(ついな)」の行事が,行われていたそうだ。

 

新年度を迎える学校にとっても,三学期は大晦日の積み重ねとも捉えることができる。今年度の最終の仕上げに先生たちが奔走し,師走と言えるにふさわしい時期にあたるのではないだろうか。一年間の仕上げを確認し,次年度へ向けての準備に精進したい時だ。日本の伝統行事に倣って,新年度を迎える前に「魔滅(まめ)」をまいて,「追儺(ついな)」したい。

 

人生設計や会社運営などは,どこかで切り替えをすべきだし,また人は切り替えを望んでいると考えられる。多くの人は,やり直しを出来ると思っているし,そのきっかけを摑むことを期待している。しかし期待している間に,時間は刻々と過ぎ去っていくのだが,90歳にして詩人となった一人の女性の作品に出合い,私は感動を覚えた。その詩人の女性は,人生の節目を90歳で迎えられ,若々しい言葉を贈って下さった。

 

「年金よりいいわよ」の言葉は洒落ている。時勢を見据えておられる。優しさは戴くもの、蓄えるものなんだ。節分の日に,私の節目となる言葉となった。

 

「私ね 人からやさしさをもらったら 心に貯金しておくの 

    さびしくなった時は それを引き出して 元気になる 

      あなたも,今から積んでおきなさい 年金よりいいわよ」

 

柴田トヨ『くじけないで』詩集から

 

帰天  2013120日 (101)

90歳を過ぎてから、詩作を始め98歳で『くじけないで』(飛鳥新社)を出版。

160万部のベストセラーとなる。

100歳を超えて第2詩集『百歳』(同出版社)を刊行。101歳の大往生だった。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫