優しい心を育むカトリック教育

2018/06/07

「水無月」(みなづき)

夏の風物詩と言えば,かき氷に風鈴とイメージするのは,年寄りだけだろうか。暑中見舞いの挿絵によく使われているのが,かき氷・スイカ・朝顔・向日葵・風鈴・簾・海辺の風景などだ。視覚で涼を感じる,挿絵の描かれた暑中見舞いは,毎夏の楽しみの一つになっている。そして夏を感じる頃になると,和菓子店の店先に「水無月」という張り紙が,よく見られるようになる。京都人にとっては,6月30日は夏越の大祓いの日で,水無月のお菓子を食べるのが,当たり前の習わしになっている。

 

 

1年のちょうど折り返し点にあたるこの日に,この半年の罪や穢れを祓い,残り半年の無病息災を祈願する神事「夏越祓(なごしのはらえ)」が,各神社で行われる。この神事に用いられるのが,「水無月」と言われる和菓子だ。白の外郎生地に小豆をのせ、直角二等辺三角形の形をしている。上部にのっている小豆には,悪魔払いの意味があり,三角の形は暑気を払う氷を表わしていると言われる,意味深い和菓子だ。しかし,かき氷のように,一気に涼を体感できるものではない。2018年の713日は旧暦の61日にあたるが,この日は,氷を食べて夏バテ予防を祈願するという行事が,室町時代に宮中で行われていたと記録されている。そして,「氷の節句」または「氷の朔日」とも言われ,御所では「氷室(ひむろ)」の氷を取り寄せ,氷の冷たさを口にして,暑気を払っていたらしい。

 

京都の北山には「氷室」と呼ばれる場所があり,そこには氷室の跡が残っている。昔は,この北山の氷室から,宮中に氷が献上されたと『延喜式』に記されているが,宮中では氷室の氷の解け具合によって,その年の豊凶を占ったとも伝わっている。氷室の氷を口にすると,夏痩せをしないと信じられ,臣下にも氷片が振舞われたようだが,夏の氷は庶民には口に入らない高価なものであった。そこで庶民は工夫をして,氷をかたどった三角形の菓子を作るようになり,それが水無月と言われている。最近では,全国どこでも販売されているし,年中売られている店もあるらしい。季節感が消えてしまうのは,なんとなく物悲しい気もするが,本物の氷が手に入らなかった,当時の庶民の知恵から生まれた和菓子,水無月に感心する。

 

農業技術の進歩で,年中食材が揃うようになった昨今であるが,旬の食べ物は何かと言う知識は,子どもたちの中に引き継いでいって欲しい。

 

6月の旬の食材と言えば・・・・・ ? 

 

野菜は,じゃがいも・玉ねぎ・そら豆・ししとう・青じそ・さやいんげんなど,そして魚は,ハマチ・アナゴ・カマス・タチウオ・スズキ・ハモ・アユ・アイナメ・シタビラメ,などではないだろうか。

 

『三里四方の野菜を食べろ』

昔の言い伝えで,流通が発達した今は当てはまらないかもしれない。三里四方,半径12㎞以内でとれた野菜を食べていれば長生きができるという意味。野菜は新鮮さが命で時間がたてばたつほど味も栄養価も下がってしまう。はるばる遠くから運ばれてきた高価で美しい野菜よりも身近なとれたての野菜の方が新鮮で価値がある。身近な地元でとれる野菜は,栄養価が高く価値があるのは今も昔も変わらないのではないだろうか。子どもたちには,日本の野菜をもっと食べる人になってほしい。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫