優しい心を育むカトリック教育

2018/07/20

FIFAワールドカップ(FIFA World Cup)

 

Fédération Internationale de Football Association(仏語)

 

国際サッカー連盟の主催するWorld Cup。日本は,ベルギー戦,2-3で敗退した。後半に入って数分の戦いぶりで,日本が勝つのではと,多くの人が期待した試合展開であった。決勝トーナメント1回戦のベルギー戦で,23と逆転負けした日本代表が,試合後にロッカールームを清掃し,ありがとうを意味するロシア語「スパシーバ」と書いたメモと,チームカラーの青の折り鶴を残してスタジアムを後にしたことが,SNSを通して,世界中の話題となった。

 

ロッカールームの清掃については,国際サッカー連盟(FIFA)のゼネラルコーディネーターを務める女性が,試合後の日本代表のロッカールームを撮影した写真をツイッターで投稿した。

 

「こちらはベルギー戦で94分間の戦いに敗れた後の、日本代表のロッカールームです。彼らはスタジアムのファンに感謝した後、ベンチとロッカールームを全て掃除して、取材対応までした。そしてロシア語で“ありがとう”と書いたメモまで残した。全てのチームの誇りであり、一緒に仕事が出来たことを誇りに思う」

 

と称賛のメッセージをツイートしたことで,世界に広まった。実際に清掃したのは,代表付きのスタッフだったのだが,逆転された後のニュースだけに,各国からの賞賛の声があがった。かつて,試合後のスタジアムを清掃するファンの姿がマスコミに取り上げられ,世界から賛辞を受けたこともある。イタリアのリーグにいた日本人選手のお辞儀も,イタリアでは礼儀としての称賛の声となった。

 

逆転された日本代表が,怒りや悔しさでいっぱいだったことは容易に想像できる。しかし,まるで使用前のようにロッカールームを清掃し,整頓し,感謝のメモまで残した姿に,世界中が感動したのだろう。

 

「日本はClass(品格)がある」とう評価の言葉に一人ひとりが自信を持ち,サッカー少年たちにこの精神を継承してほしいと願う。そして,善戦し,試合後フィールドに倒れこんでいる日本選手に,手を差し伸べ,言葉をかけているベルギーの選手の態度も見習ってほしいと思う。勝つ事だけが目標になっていては,スポーツがスポーツではなくなると,私は確信している。

 

今回の日本チームの対応に,SNS上では「日本にはClassがある」,「素晴らしいマナーだ。いつか日本に行ってみたい」,「子どもにスポーツを教えているコーチは,こういうことも教えるべきだね」という世界各国からの声が並んだ。会場のスタッフやボランティアの方たちへの感謝を,メモに残すという気遣いを持って行う日本人の心の教育を,継承していきたいと思う。清掃の担当者がいるからと言う理由なのか,終わった事の喪失感からか,スポーツ選手のロッカーが散乱している状態は,スポーツ現場ではよくある光景だ。ときには,怒りにまかせて椅子を蹴ったり,壁を殴ったりするプロの選手を現場で見る事もある。

 

グループリーグの最終戦のプレーの内容には,日本はもちろん世界から疑問の声もあったが,このロッカールームからの立ち去り方によって,世界中に日本のファンが誕生したのではないだろうか。

 

Integrity(気高さ)」は新しいことではなく,昔から教え諭されてきた事だ。しかし今回のSNSによって,関係者を含めた日本代表選手が,どういった姿勢でワールドカップに臨んだのか,そしてこの舞台からどのように去っていったのか,垣間見ることができた。

 

Integrityの根底にあるのは,特別なことではないと思う。

◎使った場所をきれいにする。「来た時よりも,美しく」

◎ゴミを拾う。

◎関わってくれた人たちに感謝する。

◎相手に敬意を持って接する。相手の文化を理解し,尊重する。

 

世界中のサッカーファンが,Integrityを忘れずに応援してくれるといいと思う。ベルギーは,中学・高等学校時代にお世話になった先生の母国だ。正直私は,この歴史的なサッカーの試合を複雑な気持ちで応援していた。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫