優しい心を育むカトリック教育

2018/11/30

アドベント

今年は,12月2日から待降節が始まります。降誕祭の四週前から始まる待降節は,イエスキリストが,当時の社会構造の中で一番貧しい姿として,私たちの前に誕生なさったことを想起します。安心できる部屋で誕生を迎えるのではなく,旅の途中で,しかも飼い葉桶に眠る姿の形で,私たちの前に現れて下さったのです。マリア様とヨセフ様にとっては,悲しく切ない環境の場での,イエスの誕生となりました。この場面を想起し,最も貧しい姿として,イエス様が私たちに近付いてくださったことを,そして神から人間への和解の印を示して下さったことを,毎年思い出すために,待降節には四本のローソクを立てたアドベント・クラウンを,用意します。

 

 

もみの木の小枝や,赤い実のついたひいらぎの葉などでクラウン(丸い形をした輪)を作り,4本のロウソクを飾りつけます。日曜日ごとに1本ずつロウソクに火を灯し,クリスマスの到来をロウソクの灯の数が増えるのに合わせて,目に見える形で意識しようとするものです。これはゲルマン民族・ドイツや北欧の風習に由来し,6世紀の中ごろスペイン教会で始まり,13世紀になって正式に教会が祝日として定め,今のように行なわれることになりました。第一週目は,濃紫色のロウソクに火を灯して,「悔い改めと償い」を奨励します。第二週目には薄紫色のロウソクに火を灯して,救い主が来てくださる「希望」を表します。第三週目は,桃色のロウソクによって「喜び」を表し,第四週目の白いロウソクは,「イエス・キリストを象徴」しています。常緑の枝でロウソクを飾るのは,私達に注がれる,永遠に変わらない神様の新しい生命を象徴します。そして,四本のロウソクは,イスラエル人がメシアを待っていた四千年も意味しています。

 

 

待降節中,典礼色は紫を用います。四旬節中に用いる紫が,回心や悔い改めを表すのに対して,待降節の紫は,救い主の誕生への期待をこめて神に心を向け,静かに主の降誕を待ち望む心を表していると考えられます。

 

待降節のミサでは,栄光の賛歌(Gloria)は歌いません。栄光の賛歌は,「天のいと高きところには神に栄光,地には善意の人に平和あれ」で始まります。この言葉は,羊飼いたちにイエスの誕生を告げる天使の,賛美の言葉からとられています(ルカ214節)。この言葉を唱えるに最もふさわしい日は,主の降誕の祭日なのです。そのため,主の降誕を準備する待降節中は栄光の賛歌を控え,主の降誕の祭日の夜半のミサのとき,大きな喜びと神への心からの賛美をこめて,Gloriaを歌うのです。

 

≪栄光の賛歌≫

天の いと高き ところには神に栄光,地には善意の人に平和あれ。

われら主を ほめ,主を たたえ,主を拝み,主を あがめ,

主の大いなる栄光のゆえに感謝し奉る。

神なる主,天の王,全能の父なる神よ。

主なる御ひとり子,イエス・キリストよ。

神なる主,神の小羊,父の み子よ。

世の罪を除きたもう主よ,われらを あわれみたまえ。

世の罪を除きたもう主よ,われらの願いを聞き入れたまえ。

父の右に座したもう主よ,われらを あわれみたまえ。

主のみ聖なり,主のみ王なり,主のみいと高し,イエス・キリストよ。

聖霊とともに,父なる神の栄光のうちに。 アーメン。

 

『ミサの式次第』,カトリック中央協議会

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫