優しい心を育むカトリック教育

2019/06/07

育てる

五月の大型連休の前に,園児と児童たちに,栽培の体験を勧めた。「朝顔・向日葵・夏の植物を種から育ててみましょう。 葉っぱの形が変わっていく様子を見てください。 上から見ると・・・ 横から見ると・・・気が付くことがあるよ」と勧めた。休み中に必ず発芽してくれることを期待し,一人ひとりが育てることに喜びを感じてほしいと願ったからだ。子どもたちに言った以上は,自分でも始めるのが当然と思い,土を買い,プランターを買い,種を買い求めて,栽培を始めてみた。

 

 

毎日の水やりのおかげで,芽が出たものの,ゴーヤは枯れてしまったが,きゅうり・枝豆・トマト・茄子の種は見事に発芽し,ふた葉から本葉へと成長して、茎も伸び太くなってきた。連休中,何処へも行く気がなかったので,水やりを欠かさず,発芽すれば一日に何回も何回もプランターをのぞいては,日々の成長を感じていた。発芽したものの枯れてしまったり,鳥に食いちぎられたりしたものもあったが,トマトは今では70cmほどに育ち,小さな実をつけている。きゅうりは一本ではあるがしっかり育ち,15cmにまで成長していて,収穫のときを待っている。他の苗は,葉はたくましく育っているが,花は咲くものの実のなる気配はなく,野菜を育てることは,こんなにも難しいのだと,気付かされている。意気揚々と,収穫したら近所にも配らなければ,我が家だけでは余ってしまうと思っていたが,今は我が家の分も収穫できるかどうかという,難しい現状にある。

 

ふた葉が落ち,本葉が出て来る。そして花が咲き,その花の後の部分に,1cmほどの小さなきゅうりらしき形をした実ができる。それが日に日に大きくなり,誰が見ても「きゅうり」と解る形状になってくる。細い細い茎が徐々に太く成長してきて実を支えている姿は健気であり,茎が折れてしまわないかと心配にもなる。

 

植物を育てるのは,見ていれば簡単なように思うが,なかなか難しいものだ。気温・日照時間・土の質や硬さ等々,専門家に伺えば,その苦労が解るたくさんの知識を提供してくださるが,聴いて理解はするものの,いざ育ち始めた野菜を目の前にすると,果たして何からどのように始めたものかと思案に暮れる。

 

ミサの時,「主の平和が皆さんと共に」と司祭が挨拶し,これに答えて信徒は「また,司祭と共に」と挨拶を交わします。新しい令和の時代,美しい調和とも言われる時代に,賢明の園児・児童・生徒の挨拶が,世界を平和に包むのではないでしょうか。

 

ご飯粒を残してはいけないのは,「八十八の手間がかかっているから,米と書くのです。このお百姓さんの苦労を考えて,残さず戴きなさい。」と教えられたものだが,苦労を知らない子どものときに,お米を大切にするという実感はなかった。しかしこの年になって,初めて野菜を育ててみて,農家の人々の苦労が,心底解ったように思う。体験してみることが,理解することの一番の近道と,ひしひしと感じている今日この頃である。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫