優しい心を育むカトリック教育

2019/08/23

師道 4の2

ヤヌシュ・コルチャック先生が,子どもの権利の三つの大きな柱として掲げたのが,「死についての子どもの権利」,「今日という日についての子どもの権利」,「あるがままである権利」である。子どもも,大人も,各々の人格が尊重されなくてはならないという理念は,今日なお重要であるというより,虐待やいじめが続いて起こっている昨今,私たち大人が再認識すべき理念ではないだろうか。

 

子どもの権利を全うした活動と言えるのが,彼が創設した子ども達のホームの運営を,子どもの自治活動によって行った事だろう。ホームでは子どもたちを見守り,尊重し,個性を伸ばして育てるために,子どもたちによる「子どもの議会」・「子どもの裁判」・「子どもの法典」という3つの活動を柱として運営した。

 

今でこそ,模擬裁判の授業や裁判所見学が教育現場に取り入れられ,法科大学院が創設されているが,ホームが創設された時代に,自治活動を主とした教育活動を展開した,コルチャック先生の先見の目は鋭い。

 

「私は,子どもの権利に関する大憲章の制定を要求します。おそらくもっと必要な条文はありえるでしょうが,これまでの私の経験から,次の19条が主な条文となるでしょう。」

 

第 1条 子どもには愛を受ける権利があります。
第 2条 子どもには尊重される権利があります。
第 3条 子どもには最適な条件の下で成長発達する権利があります。
第 4条 子どもには現在(いま)を生きる権利があります。
第 5条 子どもには自分自身である権利があります。
第 6条 子どもには誤りを犯す権利があります。
第 7条 子どもには失敗する権利があります。
第 8条 子どもには真剣に受け止められる権利があります。
第 9条 子どもにはあるがままの自分の真価を認められる権利があります。
第10条 子どもには秘密を持つ権利があります。
第11条 子どもには「虚言」「欺き」「盗み」から守られる権利があります。
第12条 子どもには持ち物や小遣いの使い方を尊重される権利があります。
第13条 子どもには教育を受ける権利があります。
第14条 子どもには正義にもとることに抵抗する権利があります。
第15条 子どもには「施設や学校に設けられる」子ども裁判所で仲間を裁いたり,仲間から裁かれる権利があります。
第16条 子どもには少年司法制度で弁護人から弁護される権利があります。
第17条 子どもには自分の哀しみを尊重される権利があります。
第18条 子どもには神様と親しく交わる権利があります。
第19条 子どもには未成熟のまま神様の許に召される権利があります。
『コルチャック先生のいのちの言葉』(明石書店)

 

 

1978年,ポーランドが国連の人権委員会に,子どもの権利条約の草案を提出した。 国連はこれを受け,翌79年の「世界児童年」に,「子どもの権利条約」の作業部会を設置,10年に及ぶ条約策定作業の後,1989年11月20日,「子どもの権利条約」が国連総会によって,採択されるに至った。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫