優しい心を育むカトリック教育

2019/08/27

師道 4の3

ヤヌシュ・コルチャック先生は,ナチスから収容所行きを免れる特赦が出ているにもかかわらず,子どもたちと共に強制収容所に行く事を選択した。強制列車に乗せられるまで,彼は子どもたちの先頭に立ち,大通りを胸を張って堂々と歩く子どもたちと,行進したそうだ。別れの朝,コルチャック先生が子どもたち一人ひとりにかけた言葉が,残されている。

 

 

平和に対する意志と,自由を奪われることが解っていながら・・・。 死を予感させる収容所を前にして・・・。それでも愛を伝えた先生の姿勢に,戦争体験のない私たちは,いま何をすべきかを考え,そしてそれをどのように実行しているかと,問われている気がする。

 

「君たちの旅立ちにさいして,いまここに別れを告げなければなりません。
長い,長い,旅路への。この旅には人生という名がつけられています。
私たちは,何度も何度も考えてみました。
君たちにどのような助言を与えるか,どのように別れを告げるべきか。
残念ながらその言葉は貧しく,ひ弱です。
私たちは君たちに,何も与えることはできません。
私たちは君たちに,神を与えることはできません。
神は君たち一人ひとりが,自分の魂の中に,探し求めるよう努めなければならないからです。
私たちは君たちに,人間の愛というものを与えることは出来ません。
人間の愛は寛大さなくしてはありえません。
許すということは,容易なことではありません。
君たちは,自分自身で,寛大であるよう努めなければならないのです。
しかし,私たちは君たちに”一つ”だけ与えることができます。
より良き人生への,まことの,正しい人生への 
―今日ではありえない― あこがれを贈ることができます。
おそらく,そのあこがれが君たちを,神へ,祖国へ,愛へと導くでしょう。
このことを忘れないように。さようなら。」

岩波ジュニア新書:近藤康子著:「コルチャック先生」

 

【本の案内】
『コルチャック先生のいのちの言葉』 子どもを愛するあなたへ
ヤヌシュ・コルチャック:著   サンドラ・ジョウゼフ 編著津崎 哲雄:訳

あかし書房

コルチャック先生 子どもの権利条約の父

作:トメク・ボガツキ      訳:柳田 邦男

講談社の絵本

子どもに”ではなく”子どもと”』 コルチャック先生の子育て・教育メッセージ

塚本智宏:著

かりん舎

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫