優しい心を育むカトリック教育

2017/06/23

Chaplin's Speech

 

2017年6月23日 (風待月

 

前号でお知らせした,チャップリン自らが書いた1940年の『独裁者』のSPEECHです。俳優としてできることには限界があり,当時戦争反対を口にすることはTABOOでした。そのような逆境の中で平和への姿勢を崩さず,自ら原稿を書いて映画の中で平和を訴えた勇気に感銘しています。

 

チャップリン

 

『申し訳ないが,私は皇帝などなりたくない。それは私には関わりのないことだ。誰も支配も征服もしたくない。できることなら皆を助けたい,ユダヤ人も,ユダヤ人以外も,黒人も,白人も。

私たちは皆,助け合いたいのだ。人間とはそういうものなんだ。私たちは皆,他人の不幸ではなくお互いの幸福と寄り添って生きたいのだ。私たちは憎み合ったり,見下し合ったりなどしたくないのだ。

この世界には、全人類が暮らせるだけの場所があり,大地は豊かで、皆に恵みを与えてくれる。人生の生き方は自由で美しい。しかし,私たちは生き方を見失ってしまったのだ。欲が人の魂を毒し,憎しみと共に世界を閉鎖し,不幸,惨劇へと私たちを行進させた。

 

私たちはスピードを開発したが,それによって自分自身を孤立させた。ゆとりを与えてくれる機械により,貧困を作り上げた。知識は私たちを皮肉にし,知恵は私たちを冷たく薄情にした。私たちには機械よりも,人類愛が必要なのだ。賢さよりも,優しさや思いやりが必要なのだ。優しさをなくせば,世の中は暴力で満ち,全てが失われてしまう。飛行機やラジオが私たちの距離を縮めてくれた。そんな発明の本質は人間の良心に呼びかけ,世界がひとつになることを呼びかける。今も,私の声は世界中の何百万人もの人々のもとに,絶望した男性達・女性達・子供達・罪のない人達を拷問し,投獄する組織の指導者のもとに届いている。

 

私の声が聞こえる人達に言う、「絶望してはいけない」。

 

私たちに覆いかぶさっている不幸は,単に過ぎ去る欲であり,人間の進歩を恐れる者の嫌悪なのだ。憎しみは消え去り,独裁者たちは死に絶え,人々から奪いとられた権力は,人々のもとに返されるだろう。決して人間が永遠には生きることがないように,自由も滅びることもない。

 

(中 略)

 

君たちは機械じゃない。君たちは家畜じゃない。君たちは人間だ。君たちは心に人類愛を持った人間だ。憎んではいけない。

 

 (中略)

 

『ルカによる福音書』の17章に、「神の国は人間の中にある」と書かれている。一人の人間ではなく,一部の人間でもなく全ての人間の中なのだ。君たちの中になんだ。君たちは,機械を作り上げる力と幸福を作り上げる力をもっている。君たちは人生を自由に,美しいものにする力を持っている。この人生を素晴らしいものにする力を持っているんだ。だから,人々のためにその力を使おうではないか。 皆でひとつになろう。 新しい世界のために,皆が雇用の機会を与えられる,君たちに未来が与えられる,老後に安定を与えてくれる,常識のある世界のために闘おう。』()

 

是非DVDでこの映画を見てほしい。高校生なら理解できる非常に明解な文章構成になっている。人間の持っている力とは何か・その力を何の目的のために使うのか・自身の人類に対する使命は何だ。

壮大なテーマに対して,考え悩み議論を戦わしてほしい。君たちが未来を担っているのだから。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫