優しい心を育むカトリック教育

2017/10/29

Halloween

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「賢明学院では,ハロウィンのお祝いはしないのですか。キリスト教のお祝いなのに・・・」と聞かれます。

確かに,ネットの記事などでハロウィンについて「キリスト教のお祭、万聖節の前夜祭」と記載している例が複数見受けられます。しかしハロウィンの習慣は,キリスト教に基づくものではないというのが,共通した見解となっています。

 

ハロウィンの起源の紹介

 

2000年以上も昔、ケルト民族の宗教の一つにドゥルイド教というものがありました。その儀式の一つの秋の収穫を祝い,悪霊を追い払うサウィン祭が起源といわれています。古代ケルトでは一年の終わりが10月31日とされていて,この日は日本のお盆のように死者の霊が家族に会いに来るといわれていたのです。ただ日本のお盆と違い,精霊や悪霊も一緒に来てしまうと信じられていました。その悪霊は家畜や作物に悪い影響を与えたり,子供をさらったりするといわれていました。そこで悪霊たちを驚かせて追い払うために,仮面をかぶったり,魔除けの焚き火をしたりしたと言われています。そこから今の仮装をする習慣が生まれたというわけです。

 

しかし最近,カトリック国のイタリアでも10月31日の夜,少し気味の悪い仮装をして子ども達が集まり,家々のチャイムを鳴らしては「Dolcetto o scherzetto!」と呼びかけるそうです。これはどうやら,衛星放送局が積極的に仕組んだ,にわか作りのイベントらしいです。8月15日のマリア様の被昇天祭からクリスマスまで,子ども達にはこれという祭日がないこともあって,仕掛け人が宣伝をしかけたのが功を奏しているようですが,もともとイタリアにはそんな習慣はなかったそうです。日本ではハロウィンは,若者たちの仮装PARTYと言っても過言ではないでしょう。

 

豆知識

★カトリックの布教活動が進み,ヨーロッパはキリスト教の布教活動の勢いに押され,各地で土着の信仰からカトリックへと改宗が進みました。布教に当たり,できるだけ庶民の抵抗を少なくするために,祭や縁起かつぎの民族習俗を,うまくキリスト教行事と一体化させる手法が取られることが,当時は数多くありました。その結果,ケルト人の習慣は続きました。

★英語で諸聖人の日は「Hallowmass」「All hallow mass」と言います。その前夜祭は「All Hallow Eve」と呼ばれ,それが「Halloween」ハロウィーンに変化したと思われますが,“ハロウィン”という言葉が記録に残っているのは,16世紀以降だそうです。

 

カブがかぼちゃになった

アメリカ大陸が発見され,イギリスから移民が上陸するようになって,ハロウィンが伝わります。かがり火を掲げるためのカブのランタンは,カブからかぼちゃに変化しました。これは魔除けのランタンだったので,くり抜く顔の表情も悪い霊が寄り付かないように,ちょっと怖い顔になっていきました。

 

トリック・オア・トリートTRICK OR TREAT

ヨーロッパでは死者の日にさまよう死者の魂をなだめるため,家々を回って食べ物を乞う習慣がありました。その習慣がアメリカに渡り,ハロウィンの日の夜に,子どもたちが御菓子をねだって家々を回る,ハロウィンのイベントへと変化していきました。韻を踏んだ語呂合わせの言葉「トリック・オア・トリート」(日本では「お菓子くれないといたずらしちゃうぞ」と訳されている)も,アメリカで生まれたと言われていますが,起源はよくわかっていません。

Trick or treat!と言いながらお菓子をねだるのですが,発音のよく似たトリック(イタズラ)とトリート(お菓子)を,語呂合わせの言葉遊びとして使用したという説があります。

 

ジャック・オー・ランタン

ジャック・オー・ランタンとは,オレンジ色のカボチャの目や口などの形を抜いて,くりぬいていき,その内側にロウソクを立てたもの(提灯・LANTERN)は,ハロウィンのシンボルとして有名です。

 

カボチャにはお守りとしての意味があり,カボチャのランタンは悪霊から守る番犬の役割があるようです。ランタンには,日本のろうそくのように,親族の霊の目印という意味合いもあるそうです。ランタンを作る風習は,イギリス地方から始まったことらしいのですが,最初はカブを使って作っていたようです。しかしランタンの材料にカボチャを使うようになったのは,アメリカにはカボチャがたくさんあったからだそうです。

 

ランタンの名前の由来は,アイルランドの物語が由来だとよく言われています。

 

昔ジャックという悪いことばかりする男がいました。あるときジャックの前に悪魔がやってきてジャックの魂をとろうとしました。しかしジャックは、悪魔をあの手この手で騙して悪魔にジャックの魂をとらないという約束をさせました。彼が死んだとき,生前悪いことばかりしていたので天国にはいけません。地獄にいこうとするとあのときの悪魔が現れ,お前の魂はとらないと約束したから地獄に連れて行けないといいました。そこでジャックは悪魔から火の塊をもらい,それをカブの中にいれて提灯にし,天国にも地獄にも行けないまま,さまよい続けるというお話です。

 

この物語から,ジャックの象徴としてジャック・オー・ランタンがつくられたのです。そうして時が流れ,悪霊を追い払うものとして使われてきたそうです。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫