優しい心を育むカトリック教育

2017/01/07

厚意のバトンリレー

2017年1月7日(土)

 

システムとしては,非常に単純明解なものです。つまり,人は他人から厚意を受けた場合,その相手にお返しをしようとします。そうすると,その厚意は当事者間のみで完結して終わってしまいます。しかし,この“厚意”を受けた相手に返すのではなくて,次の人に別な形で『渡して』みたら・・・・?それを,1人の人が別の新たな3人に『渡して』いったとしたら・・・

 

ワーナー・ブラザーズ配給:『ペイ・フォワード』可能性の王国。原題『Pay it Forward』。

 

11才の少年トレバーは、社会科の授業で「今日から世界を変えてみよう」という課題を出されます。主人公のトレバーが考え付いたアイデアは,人から受けた厚意をその相手に対して恩返し=“ペイ・バック”するのではなく, 他の誰かに違う形で先贈りして善意を広げていく=“ペイ・フォワード”その映画を見て試してみた人がいることが素晴らしい。(セントピーターズバーグ店のドライブスルーのコーヒーの連鎖)

 

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『心で思うこと』は簡単ですが,それを実際に『広げていく』ことは,とても難しいのが現実です。またそれを『継続していく』ことは,もっと困難を伴います。しかし,現代の社会の人間関係を複雑にし,ダメなものにし,子どもたちから未来への夢や希望を削いでいっているのは,他でもない現代の大人である我々自身ではないのでしょうか。今からでも遅くありません・・・私たちはトレバー少年から学ぶべきではないかと思うのです。

 

ヨーロッパ研修に出かけた時あることに気が付きました。自動扉がないのです。日本では当たり前になっている自動扉が見当たらない。その代り前の人が後ろの人が来るまで,扉を押さえて待つのです。自動扉になって後ろの人のことを全く考えなくなった日本人と,いつも後ろに気を使っているヨーロッパ人どちらが文明人なのでしょう。

 

扉を抑えて待っている人に「ありがとう」。「どういたしまして」そんな会話がある方が温かい人が育つのではないかな。皆さんならどちらを選びますか。

 

自分自身に対する誠実さと他人に対する優しさ,

すべてはこの二つに包括される。

孔子(中国の思想家、哲学者)

 

ちょっと知っておきたいこと

 

≪七日正月≫七日正月【なぬかしょうがつ】七種の節句。七日の節句。

 

正月七日を「七日正月」と言って,朝食に七種類の野菜を入れたお粥や雑炊を食べるならわしが全国各地にあります。正月六日の夜から七日の朝にかけては「六日年越し」とか「六日年取り」として,元日からずっと続いてきた正月行事の終わる日,「松の内」の最後の日,子どものころは,明日が始業式とウキウキもしたし,いやだなーお正月が続けばいいのにと願った日です。

 

お粥に入れる野菜はセリナズナゴギョウハコベラホトケノザスズナ(カブ)スズシロ(大根)の七草です。もともとは早春の野山に自生する若菜ですが,新年にあたってこの野菜を食べると自然界から新しい生命力を得ることができるため病気にかからずしかも寿命が延びると伝えられてきました。これらの野菜は六日の昼のうちに野山から摘んできておきます。

 

お粥に入れるためにこれらの野菜を刻むのですが,そのときなるべく大きな音をたてて刻むのがよいとされていて,「菜をたたく」とも言い七草囃子の歌を歌うことになっています。

 

◎「七草なぁずな菜っ切包丁まぁな板唐土(とうど)の鳥が日本の国へ渡らぬ先に合わせてバッタバタ。」

◎「七草なずな唐土の鳥が日本の土地に渡らぬ先にトントンバタリトンバタリ。」

 

習わしや伝統には深い意味が込められています。語り継ぎ大切にしていきたい日本の文化ですね。

 

※唐土の鳥は日本に疫病をもたらす渡り鳥の事。

※この唄は鳥追い唄が由来。農作物の敵である害鳥を追い払う意味も込められていました。

※七草の行事は,疫病から身を守る事と,作物を荒らす鳥を追い払い豊作を願う事が結びついたのではと考えられています。

※春の七草

芹(せり)・薺(なずな)・御形(ごぎょう)・繁縷(はこべら)・仏の座(ほとけのざ)・菘(すずな)・すずしろの七種。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫