優しい心を育むカトリック教育

2017/05/27

奉献

2017年5月27日(土)

 

私の住む地には,商売繁盛祈願が有名で,近頃異常に海外の人でにぎわう大社がある。また,紫陽花と駈馬神事で有名な大社もある。祭りがある五月には大社の神輿が町を巡る。民家の玄関には御献酒とか御神酒と書かれた縦長の紙が貼られる。これが目に入ると,祭りの時が始まったなと感じる。神社に納められた御神酒には,奉献・奉納・御神前・上,などの文字が熨斗紙の上部に書かれている。私は,奉献・奉納などの言葉から,本学院の「奉献会」をいつも連想してしまう。

 

全国の私学関係者が集まる研修会が,年に数回開催される。グループに分かれて諸問題を話し合うのだが,最近よく話題になるのが,保護者対応についてだ。Claim対応をどうしているのかと各校の理事が話題になさるとき,「先生のところは如何ですか」とよく尋ねられる。「特別大きな問題はないですよ」と答えるとまず疑義の視線が鋭く私を貫く。「先生の所では,組織編制されていますか」とか,「年に何回集会がありますか」は定例質問のようになされる。そんな時,私はちょっと自慢できる賢明学院の保護者の組織「奉献会」を自慢する。「私どもの学院では,奉献会という組織がありまして・・・・・」ここで,まずざわつきが起こる。毎回のことで予想している反応だ。そして「皆様の疑問に感じておられるこの名前ですが・・・・」と切り出していく。

 

保護者全員が会員であり,諸活動の推進となる役員がおられ,さらにそれを円滑に進めるための役員もおられると説明を続ける。奉献会には総会があり,学期単位での役員の会議があり,月に一度のペースで組織を運営する担当者の方の会議が営まれる。この組織運営を説明するだけでほとんどの理事や校長は「真似できませんよ」と返答する。確かに,学校の為にこれだけの時間を割いて活動してくださっている保護者の活動は例を見ないだろう。

 

平成25年当時の文部科学省の下村博文大臣から「奉献会」の功績が表彰された。賞状はリヴィエ・ホールのエントランスに飾られている。受賞のきっかけとなったのは,組織運営もさることながら,通学安全指導・奉献会員の研修会・BAZAARの活動等々,諸活動に共通している自主・自立した活動と学校と奉献会の関係において,見返りのない純粋な関係を維持した活動であることであった。

 

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奉献会の名称は,本学の設立母体である聖母奉献修道会からその名を拝受したそうだ。聖母奉献とは,聖母マリアが幼少の時,当時の習慣に習って神殿で奉仕の時期を過ごすとき,両親の勧めではなく,自ら神殿の階段を上り奉献生活に入ったという古事に由来している。自ら進んで仕えるという精神が保護者の組織である「奉献会」に引き継がれて今日に至っている。社会情勢の変化は大学受験制度の変更や,学習指導要領の改訂によって教育界にも大きく影響してきている。しかし創立当初からの精神は,奉献会の活動によって,また時代に応じて具体化され引き継がれていくのだろう。そう私は期待している。この一連の説明をすると,同グループの理事や校長は異口同音に「うらやましいな。いいですね。」と反応した。「どうやって組織化したのですか」という質問には,こう答えることにしている。「それは,保護者の共通の想い,『子どもたちに笑顔を』ですよ。それがすべての原動力です」と。

 

2017年度は『学び・たのしみ・共に成長』をMOTTOとして活動が始まった。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫