優しい心を育むカトリック教育

2017/07/24

まつり

 

2017年7月24日 

 

gakuintyo-20170725

 

この季節になると,地方の友人から祇園祭に行きたいので案内してほしいとか,巡行をどこで見たら一番いいのか穴場を教えてほしいとか,いろいろ頼まれる。私自身は生粋の京都人ではないから,この類いの依頼には,ほとほと困ってしまう。依頼を受けた友人には,京都は暑いからクーラーの良く効いた涼しい家で,テレビで巡行を見ているのが一番いいよと答えている。私自身祇園祭は,鉾や山の巡行が祭そのものだと,つい最近まで思い込んでいた。ところが,錦市場で花屋を営むかつての教え子との間で,祇園祭が話題になった時,「先生,祇園さんは7月の1日から始まるのですよ」と教えられた。祇園祭は,71日の「吉符入」に始まり,31日の境内摂社「疫神社夏越祭」で幕を閉じるまでの一ヶ月にわたって,各種の神事・行事がくり広げられることも,この教え子から知った。祇園祭は,古くは平安時代からの町衆が支え,現代の町衆にまで受け継がれてきた粋な心意気が,息づいている。京都の中心地域で商いをしている花屋の彼は,今年の祭りでも大活躍するのだろう。

 

日本三大祭りの一つ祇園祭が始まった。

八坂神社で,17日にある前祭(さきまつり)の山鉾(やまほこ)巡行で先頭を進む長刀(なぎなた)鉾に乗る稚児や禿(かむろ)が本殿の周りを3周する「お千度の儀」が執り行われ,祭りの無事を祈願した。千百年の伝統を有する八坂神社の祭礼は,祇園御霊会(ごりょうえ)と呼ばれ,貞観11年(869)に京の都をはじめ日本各地に疫病が流行したとき,平安京の広大な庭園であった神泉苑に,当時の国の数66ヶ国にちなんで66本の鉾を立てて,祇園の神を祀り神輿を送って災厄の除去を祈ったことにはじまったと言われている。

 

祇園祭にゆかりの場所は,すでに鉾の巡行に備えて準備が始まっている。市内のバス停留所やバスの車内には,乗客が自由に持ち帰ることが出来る,A3の用紙表裏両面にバス路線の変更案内の「お知らせ」が記された用紙が取り付けられた。用紙には,経路変更・運行経路・臨時バスの運行・臨時バスの増便予定等が両面にびっしりと記載されている。実施予定日は10日の神輿洗式・12日の鉾曳初・15日の宵々山・16日の宵山・17日の前祭の山鉾巡行,神幸祭・24日の後祭の山鉾巡行・還幸祭・28日の神輿洗式の行事に伴って,お知らせにあるようにバスの運行が変わる。これだけ変更があれば苦情も出て来るのではないかと思うが,市民の苦情を私は耳にしたことがない。大はばな路線の変更も,市民は受け入れている。祇園祭には,京の祭りとしての風格を感じる,いやいや威厳さえも感じる。

 

さて,最近急増している海外からのお客様は,この変更に対応して京の夏を楽しんでくださるのだろうか。この頃,浴衣を着用されている観光客の皆さんをよく目にするが,手にされているスマートフォンを利用するだけではなく,京男京女に道を尋ねてほしいし,また祭りについても尋ねてほしい。スマートフォンからではない知識と知恵を得られることがあると思う。修学旅行で京都を訪れる学生さんも,人に尋ねることを学んでほしいと思っている。他人に尋ねることを忘れてしまっては,本来ある町の文化は伝わらないのではないかと心配している。自分で調べることも大切な学びだが,人に聞くことも大切な学びである。人に関わり尋ねるという行為から,書籍には記載されていない,またスマートフォンには出てこない知恵が学べると思う。

 

スマートフォンは凡人を情報収集のプロにしてくれるが,人と人のCOMMUNICATIONを失っていってしまうのではないかと心配している。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫