優しい心を育むカトリック教育

2017/08/08

きせつ

 

2017年8月8日 

 

炎天下を,頭の先から足の爪先にまでも感じる,暑い夏だ。油照りという言葉が相応しいと感じられる,灼熱の日々が続く。この天候の影響で,経験値をこえる局所豪雨が起こり,各地に甚大な被害が出ている。ニュースで道路が激流の川と化した映像を見ながら,自然と人間の対峙を根本的に考える時が来ていると思った。北海道の帯広市では,90年ぶりに37.1度の気温を記録した。

 

8月8日は二十四節気では,立秋(りっしゅう)であり秋の始まりのはずだが,実際はまだまだ暑い盛りの日々である。日中は猛暑でも,朝晩に涼しさを感じるように早くなって欲しい。そして以前のように,鈴虫やひぐらしの声が聞こえ始める秋の気配を感じたいとつくづく思う今日この頃である。虫の声と言えば,最近コオロギの声を聴かなくなったように感じる。コオロギは枕草子にも登場していた,秋を代表する虫なのに残念な気がしている。餌になる物がなくなったのだろうか,それとも農薬のせいだろうか。どこででも聴こえていた鳴き声が,秋の訪れを教えてくれていただけに,惜しい思いにとらわれた。虫の声で季節のうつろいを知る情緒は,いつまでも忘れたくないものだ。

 

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『虫は鈴虫。ひぐらし。蝶。松虫。きりぎりす。はたおり。われから。ひを虫。螢。』

 

枕草子に出てくる虫の名前は,現在の虫の名前とはずいぶん違っているので,習った記憶を手繰ってみた。鈴虫は現在の松虫,きりぎりすはコオロギ,そしてひを虫はカゲロウのことをさすまでは覚えている。

 

この歌「虫のこえ」も,皆さん覚えていませんか。

 

『あれ松虫が 鳴いている  ちんちろ ちんちろ ちんちろりん

  あれ鈴虫も 鳴き出した  りんりんりんりん りいんりん

秋の夜長を 鳴き通す       ああおもしろい 虫のこえ』

作詞/作曲 作者不詳 文部省唱歌

「尋常小学読本唱歌」(1910)より引用

 

今,虫の声がする季節を取り戻したい。歴史上の出来事ではなく,日常の生活の中に声を残し,景色を伝えたい。そして何よりも,虫の声を残したい。四季のある日本に戻したい。

 

『春は曙(あけぼの)。

やうやう白くなりゆく山際(やまぎわ)、すこしあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる。

 

夏は夜。

月の頃はさらなり、闇もなほ、螢(ほたる)飛びちがひたる。雨など降るも、をかし。

 

秋は夕暮(ゆうぐれ)。

夕日のさして山端(やまぎわ)いと近くなりたるに、烏(からす)の寝所(ねどころ)へ行くとて、三つ四つ二つなど、飛び行くさへあはれなり。まして雁(かり)などのつらねたるが、いと小さく見ゆる、いとをかし。日入(ひい)りはてて、風の音(おと)、蟲の音(ね)など。(いとあはれなり。)

 

冬はつとめて。

雪の降りたるは、いふべきにもあらず。霜などのいと白きも、またさらでも いと寒きに、火など急ぎおこして、炭(すみ)持てわたるも、いとつきづきし。昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、炭櫃(すびつ)・火桶(ひおけ)の火も、白き灰がちになりぬるは わろし。』

 

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫