優しい心を育むカトリック教育

2017/09/23

七草

九月も中旬になり,漸く涼しいと感じられるようになった。連日,体温に近い暑さに耐えた体が,限界に近付きつつある時に,季節は涼しさをもたらしてくれた。彼岸の頃には,暑さ寒さも彼岸までの言い伝え通りにもっと秋深くなっているのだろう。その頃が今から,待ち遠しい限りだ。

 

涼しくなってくると,秋の七草について教えていたことを思い出す。

 

春の七草は,七草粥という習慣と共に学習させていたが,秋の七草は習慣と共にというよりは,情緒的な面から学習に入っていたように記憶している。秋の野の花が咲き乱れる野原を「花野」(はなの)と言い,花野を散策して短歌や俳句を詠むことが古来より行われていたそうだと教えたが,そんな事を体験できる体験学習も自然が少なくなり,体験させること自体が,困難になっている昨今だ。秋の七草は,それ自体を摘んだり食べたりするものではなく,秋という季節の中で観賞するためのものであり,「秋の七草がゆ」というものも存在しないと児童に伝えると,一斉に「えーっ」と声をそろえ,誰に対するでもない抗議の声をあげていた様子が思い出される。でもね,秋にも春と同じようにお彼岸があって,おはぎが食べられるよと話すと,食べ物には敏感に反応し,御粥よりおはぎの方が好きだという結論が生徒たちの間から出て来て,何ということもなしに解決してしまったことを思い出す。

 

涼しさとマッチするように,秋になると夕焼けを見る機会が増えることと共に,夏の花々より可憐なたたずまいの秋の野の花を,秋の七草と意識して観賞してほしい。季節ごとの花を愛でたり,名前を覚えることは後世にも伝えたいことだし,草花の変化を学ぶことは,自然を意識する良い機会だと思う。秋を物悲しく感じるのも,季節の味わいの一つだろう。ちなみに七草としては、 春の七種・ 秋の七草・ 昔の七草・ 夏の七草・ 冬の七草と季節ごとに定められている。

 

秋の七草は,おみなえし(女郎花)・ おばな(尾花)・ききょう(桔梗)・なでしこ(撫子)・ふじばかま(藤袴)

くず()・ はぎ()だ。その起源は,山上憶良が詠んだ二首の歌がその由来とされている

 

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七草以外にも秋は,食欲の秋・スポーツの秋・読書の秋・芸術の秋等,秋は何か新しく物事を始める機会でもあるのではないだろうか。

 

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫