優しい心を育むカトリック教育

2017/09/29

季節

gakuintyo-20170925

 

「夏という季節はいつも,忙しく,せっかちで,こちらが油断している間に,するすると走り去ってしまうのだ。夏だけじゃなくて,夏ほどじゃないけれど、他の季節もみんな速足だ。ゆっくりとのんびりとあたしたちと一緒に歩いたりはしてくれない。それは十八歳というあたしたちの年齢と関係あるのだろうか。それとも幾つになっても,季節はそっけなく近づいてきたと思ったら,あっという間に背を向けて遠ざかっていくものなのだろうか。

今のあたしにとって、季節はこんなにも早熟で、あまりにも早く老いていく。」

 

あさの あつこ「ガールズ・ブルー〈2 (文春文庫)

(本名:浅野 敦子は、日本の小説家、児童文学作家。小説『バッテリー』はのべ1000万部を超えるベストセラー)

 

この文章は作者の季節に対する想いについて,みんなで考え,話し合うことが出来そうな良い題材であり,話し合い学習の教材に適していると思う。季節に対して,季節とは何かという定義を,科学的にとらえるか,また文学的・情緒的にとらえるかで,興味ある授業になりそうだ。そして科学的かつ情緒的な両面を,自分の中に持つ必要があると考えさせられた作品なので,ぜひ生徒たちに読んでほしい本だ。

 

さて私が,夏という季節から思い出すことは,お盆を過ぎたら海で泳いではいけないとか,登山やキャンプに出かけてはいけないとか等,親に教えられていた記憶である。これは,土用の頃になると海上では大波が発生し危険だからとの,先人の教えだ。季節も変わりつつあり,天候が安定せずに山の天気も荒れるから,登山もしないようにと諭す先人の知恵だ。また,「暑さ寒さも彼岸まで」と季節の移り変わりを、彼岸を目安に捉えられていた。理屈や理由で覚えるのではなく,理屈抜きに「そうなんだ」と私は体感でも理解出来ていた。春分と秋分を挟んで,前後それぞれ三日間の合計七日間が彼岸と言われている。「彼岸」は日本の雑節の一つで,もともとはこの期間に行われる「彼岸会」のことを表していた。春分と秋分の日は昼夜の長さがほぼ等しく,気候の変わり目の折でもあるが,この頃になると冬の寒さも夏の暑さも薄れ,過ごしやすい気候になってくる。だから暑さ寒さも彼岸までという言葉が,現在まで消えることなく伝わっているのだろう。

 

理屈と理由で理解することを優先して教えるのは,教育の効果を優先したからだろうか。幼い頃から「こうなんです。昔からこうしています。貴方も大きくなったらこうしなさい」と,子どもの心に刻み込んで習慣として全ての営みを教える方法と,科学的根拠に基づいて物事を教える方法の,どちらが良いか悪いかという比較はできないとは思う。しかし,昔からこうなのだという教え方が減り,理由や原因から教えていくことがいかにも正しいのだと教育者たちが思い込んだのは,いつからなのだろう。

 

全ての習慣や営みを,いにしえからの教えや慣わしと捉え,先人の教えを基礎として理解させていくのも,一つの教育方法ではないだろうか。

 

Rousseau Jean-Jacques

「ある真実を教えることよりも,いつも真実を見出すにはどうしなければならないかを教えることが問題なのだ」

 

生誕  1712628日  

帰天  17787月 2

フランスの作家,思想家哲学者,政治哲学者,作曲家。当時の人工的退廃的社会を鋭く批判,感情の優位を強調し,「自然に帰れ」と説き,ロマン主義の先駆をなした。思想,政治,教育,文学,音楽などの分野において根本的な価値転換作業を行い,近代思想に多大の影響を与えた。

主著『人間不平等起源論』,『新エロイーズ』,『社会契約論』,『エミール』,『音楽辞典』 死後刊行の『告白』

 

皇后陛下 美智子様

「『幸せな子』を育てるのではなく どんな境遇におかれても『幸せになれる子』を育てたい」

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫