優しい心を育むカトリック教育

2017/10/01

師道  -先生の仕事-

「君の話すことは,全部本に書いてある。君から学ぶことは何もない。」

 

友達からこう言われたら,冗談とは取れないだろう。ひょっとしたら,絶交の原因となってしまう言葉ではないだろうか。この言葉は,『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(Good Will Hunting)という映画の主人公の放った言葉だ。

 

天才的な頭脳を持ちながらも,幼い頃に負ったトラウマから逃れられない一人の青年と,最愛の妻に先立たれて,失意に喘ぐ心理学者との心の交流を描いたヒューマンドラマである。

 

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フィールズ賞受賞者でマサチューセッツ工科大学数学科教授のジェラルド・ランボーは,数学科の学生たちにグラフ理論の難問を出題する。世界屈指の優秀な学生たちが悪戦苦闘する中,いとも簡単に正解を出す者が現れた。その人物は数学科の学生ではなく,大学でアルバイト清掃員として働く,孤児の青年ウィル・ハンティングだった。ランボー教授は,ウィルの非凡な才能に目をつけ、彼の才能を開花させようとするが,ウィルはケンカをしては鑑別所入りを繰り返す素行の悪い青年だった。ランボーはウィルを更生させるために様々な心理学者にウィルを診てもらうが,皆ウィルにいいようにあしらわれウィルの世話を投げ出してしまう。

 

困り果てたランボーは最後の手段として,学生時代の同級生ショーン・マグワイアに,カウンセリングを依頼する。ショーンは,バンカーヒル・コミュニティ・カレッジで教鞭に立つ心理学の講師で,ランボーとは不仲であった。しかしウィルの更生のため,ショーンは協力することになった。やがてショーンとウィルの二人は,互いが深い心の傷を負っていることを知り,次第に打ち解けていく。さらにウィルは,ハーバード大学の女子学生スカイラーとの恋を通して,自分の将来を模索する人間へと徐々に成長していくという内容なのだが,ウィルの台詞一つひとつに考えさせられることが多い。

 

冒頭の言葉を言われる側に立つと仮定した場合,同級生でなく教師から言われたなら・・・・  

また友達から言われたら・・・・・  いろいろな状態が考えられる。

 

教科書の内容を伝えるのは,MACHINEにでも出来る。人間より感情がない分,正確に何回も何回も教えることが出来る。「前に説明したでしょっ」とか「何回言ったら・・・」などと感情を出さずに,学生が納得するまで,その人の要望に合わせた速度で繰り返し学習出来るから,COMPUTERを教育現場に導入すべきだと,PCが社会に浸透し始めたころ,PC導入推進者たちがよく口にしていた。

 

では,先生たちは何をどのように,教えるべきなのだろう。導入論争が行われた約30年前より,現在のPCは、はるかに進歩している。では,先生たちの教える技術は進歩したのだろうか。授業でDATAPROJECTORで投影し,企業開発の教育PROGRAMを駆使するのが,先生の仕事になったのだろうか。

 

「その仕事は,先生,貴方にしかできない仕事ですか。」

人と人の出会いが,教育の根本にあるのではないですか。

この映画から問われている課題は,このことなのだと痛感した。

 

「知性 + 個性、それが真の教育のゴールだ」

Intelligence plus character-that is the goal of true education.

(マーティン・ルーサー・キングの言葉)

 

「子供たちは、あなたが教えようとしたことを忘れてしまう。しかしあなたという人間を覚えているものだ」

Kids don’t remember what you try to teach them. They remember what you are.

(ジム・ヘンソンの言葉)

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫