優しい心を育むカトリック教育

2017/10/09

秋 そのニ ”ならわし”

日本に伝わるそれぞれの「ならわし」は,子どもたちに何を伝えようとしてきたのだろうか。

 

【縁側にススキを飾り,月見団子を供える】

ススキは,月の神様を招く依り代(よりしろ)として供えられたようであるが,秋の収穫の頃に,稲穂に似たススキを供え,収穫を祝ったことから始まったともいわれている。むかしススキには,魔除けの力があると信じられていたことも,ススキを飾る理由の一つだとも伝えられている。

地方によっては,お月見に供えたススキを軒先に吊るすと「一年間病気をしない」という言い伝えも残っている所がある。

 

【団子を三方にのせてお供えする】

十五夜には,これからの収穫を祈り,十三夜ではその年の収穫に感謝して,お米の粉で作った団子を供えたのが月見団子の始まりらしい。月見団子とは「真っ白な白玉だんご」のことで,月は霊力を持った真珠のようなものと信じられていたことに由来するのだろう。その後,そのお供え物をいただく事で,月の力を自分にも分けてもらって,健康と幸せを得ることが出来ると信じられてきた。

 

また,ぶどうなどツルのあるものをお供えして,それを御下がりとして食べると,お月様との繋がりが強くなるとも言われていた。

 

本のタイトルは忘れたが,幼い頃読んだ絵本の話を,月のウサギを見るたびに思い出す。絵本を読むたび,切なくて,悲しくて,何とも言えない感情を持ったことを今も思い出す。

 

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むかしむかし,あるところにウサギとキツネとサルが暮らしていました。ある日,3匹は疲れはてた老人に出会います。老人はおなかがすいて動けないから,何か食べ物を恵んでくれと言います。3匹は老人のために食べ物を集めに出かけました。キツネとサルは食料を捕まえて持ってきますが,ウサギは何も捕ってくることが出来ませんでした。ウサギはもう一度探しに行くので火を焚いて待っていて欲しいと言い残して,出かけていきました。サルとキツネは火をたいて待っていましたが,手ぶらで帰ってきたウサギを見て,ウサギのことを,ウソつきだ,優しさのない奴だ,心のない奴だとなじります。

 

するとウサギは「私には食べ物をとる力がありません。どうぞ私を食べてください」といって火の中にとびこみ,自分の身を老人にささげたのです。おじいさんは悲しみ,ウサギの清らかな魂を誰しも見ることができるようにと月の中にうつします。おじいさんは神様だったのです。

 

このお話は,悲しいお話として,今も私の脳裏に刻まれている。 月がどことなく,はかなげに見えることがあるのは,このためなのだろうか。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫