優しい心を育むカトリック教育

2017/10/11

入日色

10月に入り,今年の夏の暑さを忘れてしまうようになった。祇園祭や大文字の送り火に,人々が集まった古都は,爽やかな秋を迎えた。この地は年間で集計すると,秋の観光客が一番多いそうだ。海外からの観光客も,日本各地から訪れる人たちも,古都の紅葉を鑑賞したいと,秋に訪れるのが一番多いと言われている。

 

gakuintyo-20171011

 

10月は約4,444,00011月は約5,086,000人,ちなみに年間1415万人が観光客として来京すると報告されているから,実に全体の67%が秋の観光客という割合になる。確かに,もみじが紅葉する時期は,神社仏閣を背景に日本を代表する情景に京都は変容する。

 

山を朱色に染めるもみじの紅葉も美しいが,山肌に孤立して立ち,紅葉していく木に「ハゼ」という名の木があり,この木の葉の紅葉も目を瞠るものである。子どもの頃,美しい紅葉に惹かれて紅葉した葉っぱを取っていると,顔や首がかゆくなり,かぶれたことを覚えている。この木は,「小さい秋」の歌詞にも出て来るのだが,なぜウルシ科の木があの童謡に歌われているのか不思議に感じている。もみじに負けない美しい紅葉の状態で,盆栽の材料としても使われているのを見るが,盆栽を育てている人はかぶれないのかなと心配する。

 

Mapleの紅葉は、緑を残しながら徐々に木の下枝から紅葉し,深紅になっていく。

 

御堂筋のイチョウは、整然と並びながらも,木によっては黄色に様変わりしていくスピードが異なる。整然とはしているが,それぞれの木の個性を強調している。もみじは逆光で見ると「深紅とはこの色ですよ。」と一枚一枚の葉が語っている。そしてハゼの木は、孤高の紅葉を見せてくれる。

 

紅葉一つとっても,やっぱり秋の景色は,日本人の心にピタッと来る景色なのだろう。葉の色の変わりゆく姿に美を見出し,そこに人々は美しさを感じるのだろう。まさに個々の感性で観賞する,古都の秋の情景だ。

 

秋と言えば懐かしい童謡がある。その歌詞の中に,ハゼの木が出て来る。

 

「小さい秋 みつけた」

作詞 サトウ ハチロー   作曲 中田喜直

 

(1) だれかさんが だれかさんが だれかさんが 見つけた

小さい秋 小さい秋 小さい秋 見つけた

目隠し鬼さん 手の鳴る方へ 澄ました お耳に かすかに沁みた

呼んでる口笛 百舌(モズ)の声

小さい秋 小さい秋 小さい秋 見つけた

 

(2) だれかさんが だれかさんが だれかさんが 見つけた

小さい秋 小さい秋 小さい秋 見つけた

お部屋は 北向き 曇りのガラス

うつろな目の色 溶かしたミルク

わずかな 隙から 秋の風

小さい秋 小さい秋 小さい秋 見つけた

 

(3) だれかさんが だれかさんが だれかさんが 見つけた

小さい秋 小さい秋 小さい秋 見つけた

昔の 昔の 風見の鳥の ぼやけた 鶏冠(トサカ)に はぜの葉一つ

はぜの葉 赤くて 入日(イリヒ)色  

小さい秋 小さい秋 小さい秋 見つけた

 

「入日色」とはどんな色ですか。 「小さい秋」はどんな秋ですか。

こんな野暮な質問や愚問を発せず、味わいたい歌だ。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫