優しい心を育むカトリック教育

2017/12/01

タブロー (仏: tableau)

カトリック教会は,2017年12月3日の日曜日から,イエスの降誕を迎える準備期間の待降節が始まる。

 

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キリスト教系の幼稚園から大学に至るまで,この四週間の待降節の間は主の降誕を迎える準備として,クリスマスツリー・リース・イルミネーションの飾り付けや,主の降誕の場面を再現したジオラマ (仏:diorama)を作る。三人の博士や羊飼いたちが,飼い葉桶に寝ている幼子イエスを取り囲むように飾り付けられ,降誕の場面を再現したクリスマスタブローやページェント(英:pageant),正しくは「パジェント」と称される劇の練習が始まる。この劇は,一般的な劇ではなく,その場面を見ることで聖書の場面を想起し,救い主が私たちの所に来てくださったことを喜びとする,祈りの時である。したがって,主役やヒーローは必要ではなく,拍手もStanding ovationも必要ない,まさに「祈りの集い」であるべきだ。主の降誕の場面の聖書朗読に則して,台詞は極力少なくされ,動きもできる限り少なくし,聖書に忠実に再現されていく場面劇である。聖書にしるされている場面を見ることで,より具体的に現実的に主の降誕を,自分のものと出来るのである。このような聖書劇が執り行われるようになったのは,ラテン語で書かれた聖書を読むことが出来ない当時の人々に,よりわかりやすく伝えるための創意工夫から始まったとされ,15世紀のフランスを中心に,中世ヨーロッパで発達した。旧約・新約聖書に題材を得て,イエス・キリストの生誕・受難・復活の物語を主題とし,10世紀から16世紀にかけて発展を見せ,特に15世紀にその人気は頂点に達した。

 

中世ヨーロッパの聖書は,ラテン語で書かれたものを用いていて,一般人には理解できない言語であった。したがって聖書の内容を,庶民が理解出来ているとは言えなかったので,聖書の言葉と視覚を用いて,聖書の場面を見せて伝える様々な工夫がなされた。こうして聖画や聖堂のステンドグラス・彫像(御像) 等と並び,人物を生き生きと描くものとして聖書劇が発展していった。

 

Christmas pageantに,主役は必要ではない。劇の出演者として,マリア様になれなかったとか,ヨセフになれなかった,また天使ガブリエルになれなかった,博士になれなかった等という残念は,宗教的にはあり得ない。Christmasに対する理解不足から,主役をめぐる雑念があり得るらしいが,聖劇に集う全ての人が,聖書に基づいてその場面を想起し,主の降誕を喜びとすることが,この劇の大切な目的である。

 

パジェントとは「ページを開く」と言う意味の言葉から出来ており,歴史的な出来事の場面を本のページをめくるように次々と表現し、造っていくという意味である。

 

Christmas pageantのナレーションから

 

彼女は初子を産み,布でくるんで,飼い葉おけの中に横たえた。宿屋に彼らの場所がなかったからである。 その頃地方では,夜に羊飼いたちが野宿をしながら,自分たちの羊の群れの番をしていた。見よ,主のみ使いが彼らのそばに立ち,主の栄光が彼らの周りで輝いた。そのため,彼らはおびえた。み使いは言った,「恐れてはいけない。見よ,わたしはあなた方に,あらゆる民にとって大きな喜びとなる,良いたよりをもたらすからだ。すなわち,今日,ダビデの町で,あなた方に救い主,主なるキリストが生まれたのだ。これが,あなた方に対するしるしだ。あなた方は,布にくるまり,飼い葉おけに眠る幼子を見つけるだろう」。 突然,天の大軍勢が,そのみ使いと共に神を賛美して,こう言った。

 

Angels we have heard on high Angels we have heard on high  Sweetly singing over the plains;

And the mountains in reply   Echoing their joyous strains.

Gloria, in excelsis Deo ; Gloria, in excelsis Deo!

「いと高き所に、栄光が、神にあるように

 地の上に、平和が、御心にかなう人々にあるように」

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫