優しい心を育むカトリック教育

2018/01/26

ステンドグラス Ⅲ 鳩と聖書

一昔前,鳩は何処でも,よく見かけた鳥でした。天王寺駅にも,たくさんの鳩がいました。そしてお寺の境内には,必ず鳩が存在していました。鳩を放ち,目的地までの速さを競うレースもありますが,最近は昔ほどそのレースを見かけなくなりました。

 

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チャペルのステンドグラスには,雪のように「白いハト」が祭壇中央へ向かって飛び立っている様子が描かれています。旧約聖書のモーゼが,神から十戒を授けられたことにちなんで,十羽の鳩が描かれています。

 

創世記6章~8章の,大洪水とノアの記録にも鳩は出て来ます。地が水で覆われて何日も経った後,ノアは乾いた土地があるかどうかを調べるために,箱舟から鳩を放しますが,陸地がなかったのか,鳩はオリーブの枝を咥えて戻って来ます。(創世記8:11)この話は大洪水が地上の悪を一掃した後,神が人間との間に平和を宣言されたことを示し,聖霊が神と人との間に和解が生じたという良い知らせを,鳩によってもたらしたことを,表しています。

 

イエスが洗礼者ヨハネから,ヨルダン川で洗礼を受ける場面にも,鳩が登場します。「聖霊が、鳩のような形をして、ご自分の上に下られるのをご覧になった。」(ルカ3:22) 聖霊は私たちの目には見えませんが,この時に,聖霊は目で見える鳩の形となって現れます。聖書で鳩は,清さと無害,素直さの象徴とされています。真っ青な大空をはばたく鳩の姿は,清さ・純粋さを忘れずに,社会へ,未来へと巣立っていく卒業生の姿を現します。ステンドグラスに描かれている,大空にはばたく鳩(卒業生)の姿を,片隅に咲いている百合の花として描かれた中に込められた母校の思い,また創立者の思いが,卒業生を見送っています。

 

『相談するときには過去を,享受する時には現在を、何かするときには,それが何であれ未来を思え。』

 

『目を閉じてごらん,そうすれば見えるよ。』  Ferme les yeux et tu verras.  

 

JOSEPH JOUBERT ジョセフ・ジュベール

生誕 1754

帰天 1824

フランスの生涯を読書と瞑想で過ごしたモラリスト,エッセイスト。生前には一切出版活動を行わず,死後14年経って友人のシャトーブリアンが『随想録』を刊行した経緯があります。主な著書『パンセ』は死後に発表された(パンセとはフランス語で『考察・思想』を意味し、パスカルだけでなく様々な作家が著書名として使用しています)。同書は現在でも多くのファンを持ち読み継がれています。

ヨーロッパでは、科学が著しく進歩し人間の理性が,世界の真実を明らかにするという思想が広まり,キリスト教に基づく世界観に疑問の声があがり始めていました。その風潮の中で,理性の落とし穴を鋭く指摘し,物事を謙虚に受けとめることの大切さを記しています。理性こそ万能だという考えには,落とし穴が付きまとう事や,危うさがあると指摘しています。「人間はおごってはならない」とし,人間の弱さを明らかにすることを重視し理性重視の思想に警笛を鳴らしました。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫