優しい心を育むカトリック教育

2018/03/13

聖週間 その1 (3-1)

カトリック教会の聖週間が近づくと,侍者をする子どもたちは教会へ集まって侍者の練習をする。聖木曜日・聖金曜・聖土曜日と日によって侍者の動き方がすべて異なるので,神父様と先輩の高校生からみっちりと侍者の動きをしごかれたものだ。それこそ手の位置,礼の仕方など徹底した指導だった。

 

厳しい侍者の練習が終わると,教会の庭で手打ちの野球に興じたものだ。これが何とも言えず楽しく今だから言えるが,侍者の練習よりみんなで野球することに魅力を感じていたと思う。ホームランゾーンのライトはお御堂の屋根を超えること,レフトは道に出たとき,藤棚に引っかかったときは,ツーべスと特別ルールを作っていた。ベースは教会の庭木が一塁。ごみ箱の位置が二塁。三塁はバラの木とバラの木の間あたりになっていたと思う。一年下の史雄君は背が高く,彼の打球はライトゾーンのお御堂の大屋根を超すことがしばしばあった。屋根を越さずに落ちてくるボールを受け捕るとアウトになるので,彼がバッターになると守備側はお御堂の横の木々の間に陣取って,落下してくるボールを受けようと知恵を絞って守備を考えたものだ。彼がホームランになりそうな球を打つと,ピッチャーが大声で「右 みぎ 左 ひだり」と叫んで合図する。見えないところから落下してくるボールを捕ったときは,経験したものしか知らない充実感に満ち溢れたものだった。

 

年によって復活祭は移動するので,春休み中に聖週間を迎えるときもあれば,学校が始まってから聖週間を迎える年もあった。一番早い年で3月22日,最も遅い年で4月25日となっている。とにかく春休みに聖週間があると,みんなで集まって,みんなで遊び復活祭に卵をもらえる一週間が,とても充実していた。

 

子どもたちの楽しさは別として,大人達は,枝の主日の準備の枝切と枝洗い,聖週間の準備に忙しい週間だった。子どもの頃のカトリック田辺教会では四旬節の黙想会もあって,イエスの受難,死,復活にすべてが集中し,単なる週間の繰り返しではなく一回限りの決定的出来事を,毎年記念することによって,キリストの愛を自分の中で確かめる時となっていたと思う。

 

 

オーバーアマガウ「OBERAMMERGAU」ドイツの受難劇

 

ドイツアルプスの村・オーバーアマガウで行われる世界最大のキリスト受難劇がある。1632年ドイツでペストが猛威をふるったが,オーバーアマガウの被害は奇跡的に少なかったので,信仰の篤い村人は神に感謝を込めて,1634年以来380年以上も受難劇を上演し続けている。(現在は10年に一度開催されている次回は2020年に開催される)

 

野外劇場で行われる劇には2000人以上が登場するが,これらはすべて村人によって演じられ,オーケストラや聖歌隊,演出・大道具など,劇に関わるすべてが村人によってとり行われている。開催される年は,5月から9月までの間に100回以上も上演される。

 

高原リゾートとしても名高い当地は,木工品や童話や受難劇をテーマにした美しい壁画でも知られている。ノイシュヴァンシュタイン城やリンダーホーフ城などの観光地にも近いので,ぜひ訪問したいと計画している場所だ。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫