優しい心を育むカトリック教育

2018/04/30

ゴールデンウィーク

賢明学院では連休中の5月1日と2日を,全校の園児・児童・生徒の自宅学習の日として休校日としている。

当初,この実施方法にご批判もあったが,最近では本学を模していると思われる学校が現れ始めた。世の中で働き方改革が進む中,教員の労働時間も話題になってきている。これ以上,教師の働く時間を制限されると,教科外の指導の時間が激減し,後には授業そのものに関する時数も減るという懸念の声もある。

 

何もかも学校が担う時代は,今終わろうとしている。授業の形態も,自ら考え,自ら調べ,自らまとめ,それを発表し,そこから意見交換をしながら,結論を導き出す授業へと変革が求められている。このゴールデンウィークの間に,どのような学校形態が将来像となっていくのか,ゆっくり検討してみたい。

 

一方,賢明生にはこの休みの間に,こんな体験もしてほしいと願っている。ある種の動物や,木や,植物が特定される場所,また自分が心を奪われる場所を,まず見つけてほしい。そして,その魅力にふさわしい価値ある存在になるために,自分が惹かれるものを心に留め,何を行なえば一番よいのかを模索する,そんな時間を持ってほしいと思う。自分の好きな動物を決め,その動物からいろいろなことを学んでほしい。自然の営みから無垢な生き方を学ぶことは,人の心を豊かにすると考えられる。「自然との調和」という言葉がコピーと化して世に氾濫しているが,その言葉を実現するとすれば,自然と一体化していくことが必要となってくる。           

 

 

まずは身近なところで,自分の好きな木を見つけてほしい。学校にある木でもよい。通学途上の木でもよい。その見つけた木を,自分の木として毎日見つめてほしい。そうすれば,その木の変化が自ずとわかるだろう。いつの間にか新緑になっていたというのではなく,日々の変化に目を留められる人になってほしい。さらに,自分の好きな景色も見つけてほしい。それは,校内の景色でもよい。通学途上の景色でもよい。何はともあれ,まずは自然をじっくり観察するところから,人間性が培われ,自然との調和の意味が解るのではないだろうか。

 

ちなみに私の好きな景色は,リヴィエホール横の駐車場から見ることのできる,西方向の景色だ。秋の季節,夕焼け空に生えるコンビナートの煙突群も哀愁を感じるものだし,初夏の今,大きなオレンジ色の太陽が煙突の後ろに沈んでいく一瞬も良いものだ。自分の好きな景色は,明日への活力となり,それが時には疲れた心を癒してくれる。自然との調和とは,日々見慣れた景色に心動かされることではないかと思われる。この連休中に,ぜひ私の景色・私の木を見つけてほしいと願っている。

 

『われら,この地上にありて生きる限り,歓びより歓びへと導くは自然の恩恵なり。』

Sir William Wordsworth,

生誕  177047

帰天  1850423

イギリスの代表的なロマン派詩人。湖水地方をこよなく愛し,純朴であると共に情熱を秘めた自然讃美の詩を書いた。イングランド・カンバーランドのコッカーマス出身。生まれ故郷である湖水地方をこよなく愛し,自然讃美の詩を数多く残した人物。

サミュエル・テイラー・コールリッジと共同で『Lyrical Ballads(抒情民謡集)を出版。

 

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫