優しい心を育むカトリック教育

2018/05/18

聖母奉献 ―Maria様ってどんな人―

賢明学院の設立母体である修道会の名前は,聖母奉献修道会と命名されている。創立者マリー・リヴィエが修道会を創立した日が,伝統的に伝えられている聖母マリアの奉献の記念日(11月21日)だったことから,修道会名は聖母奉献修道会(Presentation of Maria)と命名され,この日は本学院の創立記念日とされている。

 

伝承によれば,聖母マリアは,三歳の頃に母聖アンナと父聖ヨアキムによって,エルサレムの神殿で祭具の準備や神殿の清掃,巡礼者のお世話などをするために,捧げられたと伝えられている。聖書には,神殿に住み,断食や祈り,そして神を礼拝する女性の集団があったと,記されている。(旧約聖書 1サムエル2章22節 出エジプト38章8節)

 

 

当時の様子を再現した絵がある。絵のタイトルは『聖母の神殿奉献』(Presentazione di Maria al tempio 345×775cm 油彩)1534-1538年頃の作品で,アカデミア美術館(ヴェネツィア)に収蔵されている。主題は,幼き聖母マリアが,両親に連れられエルサレムの神殿を訪れた際,手助けを借りずに15段の階段を上り,祭司長のもとへ赴いた場面が描かれている。幼くして自身の意志を持っていたことが,この絵には表れている。

 

マリア様が,生涯,自身を神にささげたということが,画面には良く表されている。マリア様自身の奉献は,「わたしは、主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように。」(ルカ138)という言葉に表現されている。彼女の神への全き信頼は,幼いときから生涯を貫くものだったのだ。

 

もう一つ,素敵なマリア様の絵がある。『結び目を解く聖母マリア』の絵だ。聖母マリア様の右側にいるかわいい天使が,たくさんの結び目があるリボンを聖母に差し出し,そのリボンがマリア様の手を通ると,結び目が解かれていき,左側にいる天使が,きれいになったリボンを受け取っているという絵だ。私たちの日々の生活の中で,もつれた人間関係や複雑な問題が解決されないことを,絡まったリボンに例え,そのもつれたリボンの結び目を,一つ一つマリア様が解いてくださる,もつれた問題を解決してくださるという題材の絵だ。1700年頃に描かれたヨアン・ゲオルグ・メルチオ・シュミトナーのこの絵は,ドイツのババリア地方アウグスブルグのペルラハ聖ペトロ巡礼教会(ペルラハ教会)にあり,こんなエピソードを持っている。

 

16世紀,当時ドイツでは結婚式の時,生涯を共に歩むというシンボルとして,新郎,新婦の片方の腕にウエディングリボンを結ぶ習慣があったそうですが,ある一人の貴族が,妻が離婚したがっていることを知り,尊敬する神父に,今はもつれ絡まってしまった自分のウエディングリボンを持って相談に行ったそうです。神父の聖母への熱い祈りが聞き入れられ,その夫婦は,生涯幸せな結婚生活を全うすることができたというお話です。時は過ぎ,その貴族の孫が神父に叙階された時,祖父と神父との素晴らしいエピソードに感動した彼は,そのテーマで絵を依頼,それが「結び目を解く聖母マリア」の絵として誕生したそうだ。

 

私たちの生涯には,もつれや複雑な問題が,たびたび起こりうることがある。そんな時は必ず,「結び目を解く聖母マリア」を思い出し,完全な信頼を寄せて祈りたい,また自分の信仰を深めたいと私は思う。どんなもつれをも,きっと解いてくださるにちがいないというマリア様への信頼が,世界中の人たちのマリア様への崇敬の念ではないだろうか。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫