優しい心を育むカトリック教育

2018/08/10

つぐない

猛暑が続く中,「危険な暑さ」と言う言葉を連日耳にする。猛暑もここまで続くと,残酷な暑さとしか捉えられないし,自分の身をこの高温から守らなければならないという,未経験な気象状況下に,我々は身を置いている。「クーラーを積極的に使いなさい」と言われても,地球温暖化の根源は,自動車の放熱や家庭のクーラーが原因だと言われているのに,釈然としないまま,連日クーラーに頼って生活しているのも事実だ。この「つけ」は,やがて我々に再度,降りかかって来るのではないだろうか。異例の気象状況の一因は,私たち人間にもあるのではないだろうかと思える。

 

そんな夏休みだが,子どもたちに済まないなと思うニュースが,連日報じられている。医科大の女子受験者の得点を一律に減点する恣意,競技の不正審判疑惑,学生スポーツが理事の思惑で翻弄されている現状,スポーツ界における不祥事の連続。子どもに示しがつかないとは,このような状態を言うのではないだろうか。人として恥ずかしいと言う心を,取り戻すべきだと思う。大人が償うべき時代が,来ているのではないかと思える。許されぬ過ちから,逃げ出さずに償う青年の事を歌った「償い(つぐない)」の歌詞が心の中に浮かび,一時話題となった,某裁判官の「償い説諭」も思い出した。

 

東京,三軒茶屋駅のホームで少年が4人がかりで暴行を加え,相手をくも膜下出血で死亡させる事件が起こった。裁判中,少年たちは「深くお詫びします」と言いながらも,「酔っぱらって絡んできた」等の過剰防衛を訴え,少年たちが真に反省しているのかいないのかと疑問を抱いてしまう彼らの態度に,裁判長は判決を述べた後,少年たちに異例ともいえる言葉かけをした。「あなた達は,さだまさし氏の『償い』という歌を知っていますか?」 「歌を知らなくても、歌詞だけは読みなさい。読めば,あなた達の言葉が何故皆の心に響かなかったのか,分かるでしょう」と述べたと報道された。

 

今年の夏のニュースを見て聞いて,今が大人として社会人としての,償いの時ではないかと私は思う。「法律で心を裁くには,限界がある。 今回,実刑判決で決着がついたのではなく,少年たちに心の部分の反省を促したのではないでしょうか」と,後に作詞作曲した,さだまさし氏はコメントしている。

 

「償 い」

作詞・作曲 さだまさし

 

月末になると ゆうちゃんは薄い給料袋の封も切らずに 必ず横町の角にある郵便局へとび込んでゆくのだった
仲間はそんな彼をみて みんな貯金が趣味のしみったれた奴だと
飲んだ勢いで嘲笑っても ゆうちゃんはニコニコ笑うばかり
僕だけが知っているのだ 彼はここへ来る前にたった一度だけ たった一度だけ哀しい誤ちを犯してしまったのだ
配達帰りの雨の夜 横断歩道の人影にブレーキが間にあわなかった
彼はその日とても疲れてた 人殺し あんたを許さないと 彼をののしった被害者の奥さんの涙の足元で

 

彼はひたすら大声で泣きながら ただ頭を床にこすりつけるだけだった それから彼は人が変わった
何もかも忘れて 働いて 働いて・・・ 償いきれるはずもないが 
せめてもと毎月あの人に仕送りをしている 今日ゆうちゃんが僕の部屋へ 
泣きながら走り込んで来たしゃくりあげながら 彼は一通の手紙を抱きしめていた
それは事件から数えてようやく七年目に 初めてあの奥さんから初めて彼宛に届いた便り

 

「ありがとう あなたの優しい気持ちは とてもよくわかりました だから

どうぞ送金はやめて下さい あなたの文字を見る度に 主人を思い出して辛いのです   

あなたの気持ちはわかるけど それより どうかもう あなたご自身の人生をもとに戻してあげて欲しい
手紙の中身はどうでもよかった それよりも償いきれるはずもない 
あの人から返事が来たのが ありがたくて ありがたくて ありがたくて 
ありがたくて ありがたくて・・・


神様って思わず僕は叫んでいた 彼は許されたと思っていいのですか
来月も郵便局へ通うはずの やさしい人を許してくれて
ありがとう 人間って哀しいね だってみんなやさしい   
それが傷つけあってかばいあって 何だかもらい泣きの涙が 
とまらなくて とまらなくて とまらなくて とまらなくて・・・

 

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫