優しい心を育むカトリック教育

2018/11/08

神の招き

 

早朝,満面の笑みをたたえた先生が,校長室に来られた。「どうしたのですか」と尋ねると,「今,クラスの児童が三人,チャペルでお祈りしているのです。その後姿を見ると,胸が熱くなります。」と語られた。三人のうちの一人は,小さな紙切れを持っていて,その紙切れには,

 

・机の中を,いつも片付けます。

・お友達を,たたきません。

・お友だちを,蹴りません。

・先生のお話を,聞きます。

 

と,四つの誓いなのか,神様への祈りなのかは定かではないが,上記の短文が書かれているそうだ。この子はきっと片付けが出来なくて,机の中やロッカーはぐちゃぐちゃになっているのではないだろうか。また,粗暴なところがあって,友達と喧嘩になることが多く,よく先生に叱られているのだろうと,おおよその見当は付いた。しかしこの子は,祈ることを知っているのだ。友達と一緒に,祈ることを知っているのだ。これがこの子の,素晴らしい一面だと感じた。自分の悪い所に気がつき,一生懸命直そうとしていることがうかがえる。自分で短所に気がつき,それを直そうとする素直な心と,チャペルに行こうとした健気な態度は,輝いている。

 

教室でのこの子の姿を,担任の先生に尋ねてみると,またもやこの先生の目が輝いた。「校長先生,1週間に数回ですが,授業前の挨拶の時,自分から[きおつけ]の姿勢を,するようになったんですよ」と,我ことのように喜んでおられる。「友達が小声で,きおつけやでと言うと,その友達と喧嘩になっていた子が,黙って頷いて,姿勢を正すようになったんですよ」と得意げに,児童の様子を伝えて下さる。

 

四月初めはちょっと乱暴で,整理整頓できなかった少年が,着実に変わりつつある。その進歩はゆっくりで,目を見張るような変化ではない。しかし,自分なりにいけないと思うことを,直そうとしている。

 

一緒にチャペルに来た友達がいる。一緒に祈ってくれた友達がいる。この子を支える友達がいる。

 

この少年の心が,神様の目に留まったのだろう。だから神様は,もう少しこの子と話したくなって,チャペルに呼ばれたのではないだろうか。お祈りの後,子どもたちは聖歌を歌い,チャペルを出て行ったそうだ。

 

マタイによる福音書   1815

そのとき,弟子たちがイエスのもとにきて言った,「いったい、天国ではだれがいちばん偉いのですか」。

すると,イエスは幼な子を呼び寄せ、彼らのまん中に立たせて言われた,「よく聞きなさい。心をいれかえて幼な子のようにならなければ,天国にはいることはできないであろう。この幼な子のように自分を低くする者が,天国でいちばん偉いのである。 また,だれでも,このようなひとりの幼な子を,わたしの名のゆえに受けいれる者は,わたしを受けいれるのである。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫