優しい心を育むカトリック教育

2019/07/18

まつり

六月三十日,「夏越の祓い」の神事にちなんで,京都では「みなづき」を食べる習わしが続いている。「みなづき」を食べ梅雨と別れ,祇園ばやしが聞こえると京都の夏がやってくる。古より伝えられてきたが,今年は少々異なる。今でも梅雨が明けた気配はない。大阪では蝉が鳴いたそうだが,京都ではまだまだ梅雨空が続いている。それでも町には“おはやし”が聞こえ,七月一日から始まった祭りに,観光客が押し寄せ市バスは通常のコースを迂回して走っている。

 

久しぶりに,町に出かけたが,日本人より海外からの観光客の方が多く感じた。日本の伝統文化を海外のお客様は,どんなふうに感じておられるのだろうか。海外からも日本中からも観光客を集める祇園祭のはじまりは,869(貞観11)年に疫病が流行したことに始まるといわれている。

 

 

人々は大勢の死者が出る悲惨な状況を神仏に祈願することで収めようとし,国の数にちなんで66本の矛を神泉苑に立て,さらに祇園社の神輿を担いで参集し祈祷により疫病退散を祈った「祇園御霊会(ぎおんごりょうえ)」が,祇園祭の起源だと言われている。

 

祇園祭は,一日の吉符入りから始まり,三十一日の疫神社夏越祭で終わる。十日に「山鉾建て」があり,作事方(さくじかた)と呼ばれる職人たちが,釘を使わず縄だけで部材を固定する「縄がらみ」という伝統技法で手際良く組み上げる。

 

一カ月続く祭りの行事の中で,町衆にとって一番気になるのが,市議会議場で開催される山鉾巡行の巡行順位を決める「くじ取り式」だそうだ。くじを引く32の鉾町の代表者が,各々の鉾町に伝わるくじを入れる文箱を用意し,くじ取りを行う。32基の山鉾のうち,くじを引かない鉾町がある。この鉾を「くじ取らず」と呼ぶが,古来よりその順位が決まっているそうだ。

 

前祭(さきまつり)巡行の先頭1番の長刀鉾,5番の函谷鉾と,21番放下鉾,22番岩戸山,殿(しんがり)23番の船鉾は不動の位置になっている。残る18の鉾町が,くじ取りを行う。 同様に後の巡行9基のくじ取りも行われる。

 

後の巡行にも,くじ取らずの山鉾がある。1番の北観音山,2番の橋弁慶山,そして9番目の南観音山である。休み山で居祭となっているが,大船鉾はくじ取らずの殿で不動の位置であることは変わっていない。( 大船鉾は復興に向けて準備中)

 

「くじ取り式」が始められたのは,室町時代の明応9年(1500年)からであると文献に残っている。つまり,おおよそ500年間は順番を競い合う時代があり,くじ取りとなって500年が経つことになる。競い合いの中での事故,鉾町同士の喧嘩も,このくじ取りが解決に導いたようだ。

 

「くじ」は争いを解決したり,防ぐ絶好の方法かもしれない。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫