優しい心を育むカトリック教育

2019/08/07

夏越(なごし)祭

今年も多くの観光客が訪れた祇園祭は,31日の疫神社夏越祭で幕を閉じた。祇園祭は,7月1日の「吉符入」に始まり,境内摂社「疫神社夏越祭」で幕を閉じるまで,1ヶ月にわたって,各種の神事・行事がくり広げられた。1ヶ月もの間,祇園祭が続いているとは,大半の人が知らぬ事だろう。1ヶ月間に及ぶ祭りごとを支えているのは,町衆でもあり伝統を受け継いでいく事が大切と心得る人たちだ。毎日のように続く神事は,28日の神輿洗式を終え,29日に祭の終了を神に報告し,無事に全てが済んだ事を感謝する「神事済奉告祭(しんじすみほうこくさい)」が八坂神社で執り行われる。そして31日には,最後の神事となる「疫神社夏越祭」が行われ,祇園祭は幕を閉じた。

 

 

西暦869年(貞観11年)に始まった祭りは,室町時代になると,町々の特色ある山鉾が既に存在していたと『祇園社記』に記されている。応仁の乱(1467年)で,京の都は焼け野原と化し祇園祭も中断するが,明応9年(1500年)には復活する。その時から,山鉾巡行の順位を決める鬮取式が,侍所で行われる事になった。以後,町衆の努力により,山鉾の装飾にも贅を尽くすようになり,近世においては,度々の火災で多数の山鉾が消失するが,その都度,町衆の心意気によって再興され,今日に至っている。これらのいろいろな行いは,時間と資金を問わない祭りへの,深い思い入れと言っても,よいのではないだろうか。

 

絢爛豪華な,そして優雅な祭を支えているのは,町衆の力だ。夏越祭では,疫病から逃れる事ができるしるしとして,大人が通れるくらいの大きな茅の輪をくぐって,無病息災を祈る。八坂神社の境内にある疫神社の鳥居に,高さ2メートルを超す大きな茅の輪が作られ,祭の無事終了を感謝するとともに,茅の輪をくぐって「蘇民将来子孫也」の護符を授かるというのが,祇園祭の最期の神事となる。参拝者は,茅の輪をくぐったあと,無病息災を願って,茅の輪の茅(ちがや)を少し抜いて持ち帰る。

 

この「疫神社夏越祭」をもって1ヶ月にわたって繰りひろげられてきた祇園祭が,全て終了するのである。そして,この祭を多くの若者たちが見に来ている事,また祭のそれぞれの場で参加している様子を目の当たりにして,伝統がうまく続いて行くようにという思いが湧き,期待もふくらんだ。

 

何事も表に見える部分は美しいが,鉾や山を保存し,御囃子を練習するという地道な努力や行いと共に,しきたりを守り続けていく事の困難さを知り,評論するだけではなく文化の担い手となって,祇園祭という日本文化を守っていくのも,大切な日本の心ではないだろうかと思う。

 

【祇園祭の日程】2019

1日~5日 吉符入・お千度  2日 鬮取式  山鉾連合会社参 7日 綾傘鉾稚児社参 10日~13日 鉾建(前祭) 10  幣切  神用水清祓式  高橋町社参  お迎提灯  神輿洗式 12日~13日 鉾曳初(前祭)12日~14日 山建(前祭)13日~15日 舁初(前祭) 長刀鉾稚児社参 13日 久世稚児社参 17日神幸祭、 14日~16日 夕刻より 宵山(前祭) 15日 斎竹建  生間流式庖丁 日本式庖丁道生間流に依る式庖丁が奉納される。伝統芸能奉納  宵宮祭 16日 献茶祭  豊園泉正寺榊建  石見神楽  宵宮神賑 日和神楽 17日~21日 山・鉾建17日 山鉾巡行 (前祭) 長刀鉾を先頭に前祭の鉾九基、山十四基が所定のコースを巡行。 神幸祭  17日 神輿渡御出発式 古例により久世稚児の供奉20日~21日 鉾曳初 宣状式 21日~23日 宵山(後祭) 煎茶献茶祭 琵琶奉納  23日オハケ清祓式 日和神楽 24日山鉾巡行(後祭)花傘巡行 傘鉾十余基・馬長稚児・児武者等列 24日還幸祭 狂言奉納  28日神用水清祓式  神輿洗式  29日神事済奉告祭 

31日 疫神社夏越祭 素戔嗚尊が南海に旅をされた時、疫神社の御祭神蘇民将来に手厚くもてなされたことを喜ばれ、疫病流行の際、蘇民将来之子孫は疫病より免れしめると誓約された故事により鳥居に大茅輪を設け、参拝者は之をくぐって厄気を祓い、又「蘇民将来之子孫也」の護符を授かる。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫