優しい心を育むカトリック教育

2019/08/30

師道 4の4

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。

話し合い、耳を傾け、承認し、 任せてやらねば、人は育たず。

やっている、姿を感謝で見守って、 信頼せねば、人は実らず。

 

これは,山本五十六師の言葉だが,人を育てるのに必要な事に関する示唆は,コルチャック先生をはじめ,全世界の教育界の偉人に共通しているのではないだろうか。これらには,人間そのものの存在を否定するような発想は,微塵もない。出来ていないから育てるのではなく,持っている者に気付かせ,それを自身の力で成長させるように仕向ける。一人ひとりが,生まれながらの人格として意識する事を,示唆して下さっている。そして,歴史や伝統に則り,何よりも人に対峙するときの「心」を,解いてくださっていると思う。2011年に重要無形文化財保持者(人間国宝)に認定された,中村吉右衛門師が語っている次の言葉も,教育を志す者への心構えの示唆と理解出来る。

 

私の出身校の,兄弟校(男子校)の卒業生という事もあって,身近に感じる師として勝手に決めさせて頂いている。四歳から役者としての道に入られ,役者としての生きざまや道を究めていられる姿は,歌舞伎役者・俳優・脚本家だけでなく,舞台公演・テレビドラマ・映画にも俳優として出演しておられる活躍ぶりからも,知る事が出来る。道を究めていく事は,すべての「しごと」に共通する「心」なのだろう。

 

『芸を確立させていくのは,まずは真似から入るしかありません。ただ、そこで止まったら単なる物真似で終わってしまう。真似ができたとこが スタート地点。ある役者が練って,練って,作り出した芸を,次の代が真似てそこでさらに練って自分らしさをつけ加えて,それが代々続いていく。常に磨かれていかなければ伝統ではない。』  中村吉右衛門

 

園児・児童・生徒たちに言葉で説得するべきか,行動で説得するべきか。

聞き上手になっているか。

将来,拝金主義的に財産を求めるのか,内面の成長を求めるのか。

教師としての様が問われる観点だと思う。どんな意識を持つ人を育てようとしているのだろうか。

どんな「心」の持ち主を期待しているのだろうか。

過去にこだわる人か,未来を意識し,未来にこだわる人か。

失策を人のせいにする人か,自分のせいにする人か。

将来,教師の心構えは,教え子の生きざまになるのではないだろうか。

 

 

中村吉右衛門 なかむら きちえもん 1944522日生まれ

東京都千代田区出身の歌舞伎役者,俳優,脚本家。本名は波野辰次郎。初代・松本白鸚(まつもと はくおう/五代目市川染五郎・ 八代目松本幸四郎)の次男として生まれ,母方の祖父であった初代中村吉右衛門の養子となる。当初は中村萬之助を名乗って4歳で初舞台を踏み,1966年に二代目中村吉右衛門を襲名。松貫四(まつかんし)名義で歌舞伎の脚本も手掛けるほか,歌舞伎以外の舞台公演,テレビドラマ,映画にも俳優として出演している。2011年に重要無形文化財保持者に認定される。

(参考文献:月刊PHP/PHP研究所)

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫