優しい心を育むカトリック教育

2019/09/10

おもてなし

最高気温35.6度の土曜日,9月とは言えない真夏日のなか,幼稚園入園希望者の為の説明会が開催された。リヴィエ・ホールに入って来られた方をお迎えして,2階までご案内する。お客様が着席されると,お茶がふるまわれた。一見お客様を迎える当たり前の流れだが,昨日の幼稚園説明会は,少々異なっていた。来場されたお客様をお迎えして,会場までご案内するのは、年長の園児だ。見知らぬ人に対する不安と,先生から教えてもらった言葉をちゃんと言えるか,緊張と不安で顔はこわばり,歩き方までぎこちない様であった。

 

お友だちと二人で,案内役を仰せつかった園児たちは,お友だち同士固く手を繋ぎ,互いの緊張を解すかのようにぴったりと寄り添い,先生から教わった「おはようございます」・「ご案内します」の言葉と共に,声をかける勇気に翻弄され,お友だちの方が早く言葉をかけてくれとばかりに,見つめ合い,そして沈黙・・・。年長児とはいえ,緊張と不安で固まっている様子を見て,お客様の方が気を使って,「おはようございます。」・「案内して下さるの? 有難う。」,「お願いしますね。」と,優しく声をかけて下さる。一気に緊張が解けた子どもたちは、意気揚々と案内役を果たす事ができ,笑顔も浮かぶ。

 

お茶でもてなす役目の園児も,お茶をこぼさないようにお客様の所まで届けなければならないという緊張感から,「お茶をどうぞ。」の言葉が出ないまま,こわばった顔で,黙って小さなお盆ごと差し出してしまう。しかしここでも,優しいお母さま方から,「有難う。偉いわね。」という励ましの言葉を頂いて,一瞬にして可愛い笑顔に変わる事によって,与えられた仕事の責をきちんと果たす。

 

「上手にできたの?」と接待をしてくれた園児たちに尋ねると,緊張して一言も言えなかった園児でさえも「出来たよ。」と満足げに,笑顔いっぱいで報告してくれる。活躍する場を体験した園児は全員,どことなく自信に満ち溢れているようにさえ感じる顔つきになっている。

 

精一杯の子どもたちのおもてなしに,対応して下さったお母様方の優しい心が,園児を勇気づけ,自信をつけて下さったのだと感じる。案内役・接待役とこなしていく園児たちの成長した姿に,開催者側は感動したのであるが,あの自信に満ちた達成感を感じている子どもたちの笑顔の陰には,来客して下さったお母さま方の心遣いがあった。

 

これこそが,おもてなしでは,ないのだろうか。迎える人に対する感謝の心,また思いやる心配り・優しさが「お・も・て・な・し」ではないだろうか。双方の心が通じるのがおもてなしだと,教えられた1日で,体温とほぼ同じ気温になった日の,心安らぐ一コマであった。

 

 

『 優 し さ 』

歌・作詞・作曲:荒井由実(松任谷由実)

小さい頃は神さまがいて  毎日愛を届けてくれた

心の奥にしまい忘れた  大切な箱ひらくときは今

雨上がりの庭で  くちなしの香りの  やさしさに包まれたならきっと

目にうつる全てのことはメッセージ

 

カーテンを開いて静かな木洩れ陽の  やさしさに包まれたならきっと

目にうつる全てのことはメッセージ

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫