優しい心を育むカトリック教育

2020/01/18

OLYMPIC

「3月26日,東京オリンピックの聖火リレーがスタートとした」と大々的に報じられた事を,今も記憶している。1964年10月10日に開催した,アジア初のオリンピックにおいて,史上初のテレビの衛星中継が行われた。正式競技になったバレーボールでは,日本女子チームが金メダルに輝き,柔道の4 階級のうち3階級においても,金メダル。そして,体操チームの力強く華麗な競技から溢れる大活躍の姿,桜井孝雄のバンタム級ボクシングのサウスポーパンチ,さらに三宅義信の重量挙げの場面など,今も印象に残っている。

 

アメリカのヘイズ選手が,100mを10秒で走る世界新記録を打ち立て,スローモーションで走るヘイズごっこが学校で流行った事もあった。子どもたちは,10mを1秒で走る速さに歓喜したものだ。そして、裸足のアベベごっこも流行った。聖火リレーも,遊びに取り入れられ,日本の子どもたちみんなが,オリンピックから大きな影響を受けたものだ。

 

2020年の東京オリンピックの聖火は,3月12日に,ギリシャのオリンピアで採火され,3月20日に特別機で,宮城県の航空自衛隊松島基地に到着する。25日まで,震災被災地の宮城・岩手・福島の順に,「復興の火」として巡回展示されたのち,3月26日に福島県の復興のシンボル,Jヴィレッジを出発して,47都道府県すべてを巡るリレーが始まる予定だ。全国約1万人の聖火ランナーが聖火を受け継ぎ,五輪が開幕する7月24日に,東京・国立競技場に到着する。今回はどんなドラマが起こるのかと,今から期待に胸がふくらむ。

 

1964年当時,大阪でも大きな変化があった。競輪場と競馬場が取り壊され、広い空き地の瓦礫置き場だった場所が瞬く間に整地され,長居競技場が完成し,釣り池と瓦礫置き場だった所は長居公園と名付けられ,周回道路ができ,自分たちの遊び場が,かっこいい場所に変わっていく事に興奮した。放課後になると,友達と自転車に乗って長居公園に出かけ,整地されていく様子を見ては,ワクワクした。完成した競技場ではサッカーの下位順位決定戦が開催され,先生に引率されて観戦に行った事を記憶している。1964年当時,小学生だった私が,サッカー・バスケット・バレーボールなどの球技の数々を知ったのは,オリンピックを認識してからだ。当時の少年たちが取り組むスポーツと言えば,野球がすべてだった。この頃,小学校の各教室にテレビはなく,図書室に一台あったテレビで,オリンピック観戦した記憶がある。しかし今のような大画面ではなく,せいぜい24インチ程度だったのではないだろうか。ひょっとすると,もっと小さかったかもしれない。そんな小さな画面であっても,クラスごとに順番でテレビ観戦し,日本選手が活躍する場面に遭遇するたびに,興奮したものだ。今でこそ当たり前になっているが,各学校での運動会もオリンピックを真似て,開会式の入場行進が取り入れられた。

 

1964年当時,日本の子どもの大半が知らなかったサッカーが,今や人気のスポーツとなり,プロチームが出来て,日本もワールドカップに出場するようになった。今回のオリンピックで子どもたちは,どんなスポーツに興味を持ち,Sportsmanshipを醸成するのか楽しみにしている。

 

 

≪オリンピックの精神≫

第4回ロンドンオリンピック(1908)の陸上競技では、アメリカとイギリスとの対立が絶え間なく起こり、両国民の感情のもつれは収拾できないほどに悪化していました。その時に行われた教会のミサで、「このオリンピックで重要なことは、勝利することより、むしろ参加することであろう」というメッセージが語られました。このメッセージを、当時のIOC会長のクーベルタンがとりあげ、次のように述べました。

「勝つことではなく、参加することに意義があるとは、至言である。人生において重要なことは、成功することではなく、努力することである。根本的なことは、征服したかどうかにあるのではなく、よく戦ったかどうかにある。」(「近代オリンピック100年の歩み」ベースボールマガジン社)より。ただ勝てばいいというわけではなく、勝利に繋がる過程が大切になって来るのだろう。参加し、そしてひたすらに、純粋に、勝つために正しく努力することに意義があると言えばよいのではないだろうか。

 

学校法人賢明学院 学院長 中原 道夫