優しい心を育むカトリック教育

2020/10/20

育てる

 

『命はなぜ目に見えないか。それは命とは君たちが持っている時間だからなんだよ。死んでしまったら自分で使える時間もなくなってしまう。 どうか一度しかない自分の時間、命をどのように使うかしっかり考えながら生きていってほしい。さらに言えば、その命を今度は自分以外の何かのために使うことを学んでほしい』と言われたのは,105歳で生涯現役を完遂された日野原重明医師の言葉です。教師になってから,何回かお話を伺ったことがありましたが,その魅力は生き方そのものから湧き出ているような方でした。聖路加国際病院名誉院長をはじめ、多くのお仕事を兼務されていましたが,山のような仕事をこの御年でこなされているかと思うと,お話を聞くたびに勇気とエネルギーを頂いたものでした。「成人病」を1970年代から「習慣病」という言葉に変えることを提言し,「生活習慣の改善によって予防し得る」という認識を,人々の間に広く浸透されもしました。今では一般化した「人間ドック」を最初に開設され,早くから予防医学の重要性を説かれたのも先生でした。

 

コロナウィルスの蔓延で,コロナと共に生きる為には生活様式を変えなければならなりませんが,生き方の真髄は変えてはならないのではないでしょうか。それは,他者の為に私に出来る事を見つけ行動に移す事だと思います。

 

『生きがいとは、自分を徹底的に大事にすることから始まる。鳥は飛び方を変えることはできない。動物は這い方、走り方を変えることはできない。しかし、人間は生き方を変えることができる。自分のためにでなく、人のために生きようとするとき、その人は、もはや孤独ではない。なんと言っても、人が人に与える最高のものは、心である。他者のための「思い」と「行動」に費やした時間、人とともにどれだけの時間を分けあったかによって、真の人間としての証がなされる。』は,私の好きな先生の言葉です。

 

『明日をつくる十歳のきみへ 一〇三歳のわたしから』日原重明著は,子どもたちに読んでほしい本です。

先生はかつて95歳のときに『十歳のきみへ 九十五歳のわたしから』という著書を出されました。「95歳のときには気づかなかった『言い足りなかったこと』をぜひ続編として出したい」との先生の言葉から,本書は出版されたのです。「命とは自分に与えられた時間のこと。その時間をどれだけ他人のために使えるかで、その人の価値が決まる」というのが,本書で先生がぜひ伝えたかったことだと思います。SNSの発展は,素晴らしい情報社会をもたらしたと同時に,人を不幸にもしています。TECHNOLOGYが進めば進むほど利便性は整いますが,創意工夫する力は低下していきます。車の運転も自動化されるのはもうすぐです。人の移動手段はいずれすべて自動化されるでしょうし,keyboardを使わなくても言葉の指示だけで望みが可能になる時代が到来しています。現金が不必要になり,数字だけが物の価値を決めてしまうある意味危険な時代が始まりました。

 

 科学の粋を極めた時代に,何を大切にして生きるべきか,卒業までにその「心」を育ててほしいと願います。

 

賢明学院小学校校長・幼稚園園長 中原道夫