優しい心を育むカトリック教育

2020/05/27

タウ

引っ越しの為に部屋を整理していた時,引き出しが引っ掛かって出て来なくなった。無理に引っ張ってもよいのだが,昨日までスムーズに開く事が出来たのにと思い,机の下に潜り込んで,引き出しの奥から手を突っ込み,引っ掛かっているものを取ろうとした。そこには,何やら紐が三本ほど引っ掛かっている。懐中電灯で照らし,引っ掛かっている紐を引き出しの中へ押し込み,無事に引き出しを開ける事が出来た。ゆっくりと二度と引っ掛からないように,少しずつ引き出しを引いてみると,引っ掛かっていた紐の正体が解った。それは,かつて巡礼に出かけた時に購入した,タウの十字架の紐だった。イタリアのアッシジでお土産にと思い,購入した木と麻の紐で作られた簡素な十字架だ。この十字架の事を忘れてしまうほど毎日が忙しかったのか,はたまた信仰が薄いのかは定かではないが,現教皇もフランシスコと言う名前なのに,十字架を放ってしまっていたなんて,なんという事かと自責の念に駆られた。

 

 

引き出しの奥からは,当時の巡礼の写真や,アッシジの景色の写真も出てきた。片付けを忘れて,しばし思い出に浸った。何回となく巡礼者のお手伝いでアッシジを訪問した事があるが,参加者の多くの方が,もう一度行ってみたいと思われるのが,このアッシジの小さな町だ。周囲を城壁で囲まれた中に,石造りの建物が並び,町の両端に,それぞれフランシスコの大聖堂と,クララの聖堂が建っている。私の気に入っているのは,これらの大聖堂とは趣を異にした,小さなステファノ教会だ。巡礼者の数もまばらな,石造りの教会なのだが,フランシスコが生きていた時代を彷彿とさせる,何とも素朴な小さな聖堂が,私のお気に入りの場所となっている。

 

ところで,このタウと呼ばれる十字架については,案外知られていなくて,お土産として渡すたびに,「これなんですか。」と聞かれる。その都度の説明が何となく面倒なので,次のような案内書を作ったことを覚えている。

 

(当時の自作の説明書)

 

≪アシジもしくはアッシジ(Assisi)

町の名前,聖人フランシスコ(羅: Franciscus、伊: Francesco、西: Francisco、英: Francis、と聖人クララ・アッシジのキアラ(伊: Chiara Clare、またはクララClara)が生まれ育った街。

 

≪十字架 T

Τ(ギリシア語: ταυ 、英: tau

アッシジのフランシスコが,自分の修道会においてこの十字を採用しまた。タウの意味は,

『真実,ことば,光,善に向かった心の力と強さ』です。タウとは,二本の線,水平線と垂直線が一点に集中する事で天と,大地,神と人間の合流を意味します。聖フランシスコのタウには,三つの結び目のついた紐があり,それは三つの神への誓いである清貧、・貞潔・従順を表しています。

 

ヘブライ語でタウは,最終文字であり,生命のしるしとして用いられています。フランシスコは,このしるしを大変好んでいました。それで,手紙にサインをするときもTを使っていました。

 

賢明学院小学校校長・幼稚園園長 中原道夫