優しい心を育むカトリック教育

2020/03/03

通信制課程卒業証書授与式

 

3月1日に高等学校通信制課程卒業証書授与式が行われました。

当初,卒業生も増えたのでリヴィエホールアリーナでやる予定でしたが,全日制と同じく在校生の出席を止めたので例年通り多目的室で挙行し40名が巣立って行きました。

私の式辞は次の通りです。

 

40名の卒業生の皆さん,ご卒業おめでとうございます。保護者の皆さまもお子様のご卒業,おめでとうございます。ここまで成長され賢明学院を巣立っていくお子様の姿をご覧になって感無量の想いではないでしょうか。また,ご来賓として,出身中学校の先生方,リヴィエ会及び奉献会の役員の皆様,卒業生を送るこの喜びの場にご臨席賜り,心から感謝申し上げます。今後とも,ご指導ご鞭撻をお願い申し上げます。

さて,卒業生の皆さん、あなたたちは賢明学院高等学校通信制課程の4回目の卒業生で,人数は一番多い学年となりました。4年前に産声を上げた通信制は順調に生徒数も増え,現在130名超える生徒数になりました。そして,今日40名が巣立って行きます。皆さんは中学生活や高校生活で困難を感じ,この賢明学院通信制課程に来たことでしょう。同じ苦しみや悲しみを経験したからこそ,通信制にはとても暖かい優しい雰囲気を感じました。皆さんがこの学校で居場所を見つけ,その高校生活が先ほどの想い出映像にあったように楽しく充実したものだったなら,私にとっても大きな喜びです。

皆さんはカトリック学校だから本校を選んだ人は少ないかもしれませんが,全国でカトリックの通信制は3校しかありません。そんな学校で高校生活を送ったのです。せっかくカトリック学校へ来てキリスト教のことを学んだのですから,イエス・キリストの生き方を人生の道しるべにしてほしいと思います。。

イエス・キリストに倣う生き方,その一つが「弱い」側に付くことです。イエスは当時のユダヤ社会でのけ者にされていた罪人や病人に寄り添う生き方をしました。誰からも見捨てられていた社会的に弱い立場の人々の側に付きました。しかし,弱い側に付く生き方は難しいことです。日本には「長いものに巻かれろ」という言葉があるように,強い側に付いて生きる方が楽です。しかし,弱肉強食と言うように私たちの世界はいつも強い側が勝ち弱い側が負ける,強い側がいい目を見,弱い側が損をするのでしょうか。

歴史を振り返るとどうもそれは真理ではないようです。まず,地球上で圧倒的な強さを持っていた恐竜は,6600万円前に絶滅しました。恐竜に比べると体も小さい私たちの祖先である哺乳類はその危機を生き延び進化していきました。

そして,ヒトの祖先は森からサバンナに追い出された弱い群れでした。人類の祖先の進化の歩みは、「猿人→原人→旧人→新人」という単純なものではなく,現在分かっているだけでおよそ20種の人類が時には共存し、誕生と絶滅を繰り返していたそうです。20万年前に誕生したホモ・サピエンスはネアンデルタール人と同時期に共存していました。それもネアンデルタール人は今までの説を覆して,知性を持ち言語を操り高度な文化を持っていた可能性が高いと言われています。にもかかわらず4万年前に絶滅しました。体力や体格が優っていた彼らが滅び,華奢でひ弱なホモ・サピエンスが生き延びたのは何故でしょうか。その答は「仲間」です。家族単位か10数名のグループでしか生活しなかったネアンデルタール人に比べ,ホモ・サピエンスはもっと大きな集団を作って生活しました。弱いからこそ狩りも協力しなければなりませんでした。

新約聖書の中でパウロはこう言っています。「体の中でほかよりも弱く見える部分が、かえって必要なのです。わたしたちは、体の中でほかよりも恰好が悪いと思われる部分を覆って、もっと恰好よくしようとし、見苦しい部分をもっと見栄えよくしようとします。見栄えのよい部分には、そうする必要はありません。神は、見劣りのする部分をいっそう引き立たせて、体を組み立てられました。」(Ⅰコリ1222-24)。また,パウロはこうも言っています。「むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう。」(Ⅱコリント12:9)。弱かったからこそ様々な逆境,試練を乗り越え,進化を成し遂げ,仲間と協力して生き延びた人類の祖先を見る時,パウロはそんな意味で言ったのではないでしょうが,「弱さ」を喜び誇りたいと思います。

今,日本は世界は新型コロナウイルスの感染で大変な時期です。しかし,過去の人類がそうであったように,この危機を皆で協力して乗り越えようではありませんか。必ず,乗り越えられると信じています。そして,皆さんには「弱さ」の中にある真理を,つい私たちが見落としてしまいそうな真理を気付ける人間に,弱いが故に力が生まれる真理を体験できる人間になってほしいと願います。

最後になりましたが,卒業記念品としてチャペルのステンドグラスとシャローム広場の改装をいただきました。卒業生の皆さんと保護者の皆様に感謝いたします。どうぞ,お帰りになる前にご覧ください。

母校のことを知りたいのなら,時々通信制のHPを覗いてください。私も校長ブログを書いています。

卒業生の皆さん,賢明学院の卒業生として誇りをもって巣立っていきなさい。

自分たちが「地の塩,世の光」であることを忘れずに日々過ごしなさい。

皆さんの人生が愛と希望に溢れ,充実した毎日となることを祈り願って,私の式辞といたします。