優しい心を育むカトリック教育

2022/03/01

全日制課程卒業証書授与式

 

本日、51期生の卒業証書授与式が行われました。式が終わった時には雨が降ってきました。

昨日のブログにも書きましたが、晴男の私が雨を食い止めることができればと思いましたが、雨男で有名な学年主任の力が今日は勝ったようです。

私の式辞は、次の通りです。

 

51期166名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。保護者の皆さまもお子様のご卒業、おめでとうございます。ここまで成長され賢明学院を巣立っていくお子様の姿をご覧になって感無量の想いではないでしょうか。

さて、卒業生の皆さん、皆さんの高校生活の大半は新型コロナウイルス感染の影響を受けました。1年生の3学期末に始まった休校は2年生になっても続き、4月からはオンライン授業が始まりました。6月半ばから対面授業が始まりましたが、体育大会も秋麗祭も中止になりました。そんな中でフランスへは行けませんでしたが、九州研修旅行は実施でき私も引率しました。熊本、天草、長崎、ハウステンボスを巡った研修旅行は、高校生活のハイライトになったでしょうし、沢山の想い出ができたと思います。私にとってはイルカウォッチングが初めての体験でしたので、まじかに泳ぐイルカの姿に歓声を上げたい気持ちでした。また、これも初めて行ったハウステンボスでは、クリスマスに向けたイルミネーションの美しさに圧倒されました。

それと共に印象深かったのは浦上天主堂でのミサです。今年度の創立記念日の静修も指導してくださった西経一神父様が司式してくださいましたが、神父様らしいユーモアに富んだお話の中に心に深く届くメッセージがありました。卒業アルバムを見ると、ミサが終わってから皆と談笑する神父様の写真が載っていましたが、その時の様子が瞼に浮かびます。

3年生になってからもコロナ禍のために全校生が一堂に集まる機会もありませんでした。しかし、体育大会は高校生だけでしたがいつもの大阪府立体育館で実施できました。体育大会の華、集団行動は見事な一体感を感じさせる演技でした。こうして振り返ると想い出のアルバムの写真は少し少ないかもしれませんが、この仲間と作った想い出はいつまでも皆の心に残るだろうと信じています。

そして、高校3年生の1年を振り返った時に、全員がいつまでも覚えていることは夏と冬のオリンピックがあったこと、それと卒業を迎える時にロシアによるウクライナ侵攻があったことだと思います。私も高3の冬に札幌オリンピックがあり、先日からテレビで50年を迎えたと報じられている浅間山荘事件がありました。浅間山荘に立てこもる連合赤軍に対して、ついに機動隊が突入するテレビの映像を見続けたのを記憶しています。規模が全く違うし内容も違いますが、ウクライナ侵攻の映像を心痛めながら見ている人もいると思います。

先週の卒業講話で、神に似せて造られた人間の特徴の一つとして「知性」を挙げました。「知性」とは何でしょう。「学習」と直結する力でもあるでしょうが、私は「背景を見る力」、もっと具体的に言うと、「人の痛みを知る、人の痛みを想像できる力」だと思います。弱肉強食の動物の世界では、自分のいのちをつなぐために相手のいのちを奪うことは当たり前です。しかし、人間は違う。自分が正しいと思って行動することで相手を傷つける、まして命を奪うことになるなら、立ち止まって相手の痛みを想像することができるはずです。

昨日の卒業感謝ミサで、髙畠神父様は「善いサマリア人」のたとえ話で「憐れに思う」ことについて話されました。「肝苦りさ(ちむぐりさ)」という沖縄の言葉を紹介されました。人の苦しみ悲しみを知った時、自分の肝も同じように苦しいという意味です。実は、「憐れに思う」と訳されているギリシャ語の原文は「スプランクニゾマイ」という単語が使われており、直訳すると「腸(はらわた)がちぎれる思いにかられ」で「肝苦りさ」と同じような意味です。私たち人間は、これらの言葉が生まれたほど相手のことを考え、痛みを共にすることができる存在です。でも、その逆もできる存在です。私たち一人ひとりは優しく温かい心と、暗く冷たい心の両方を誰しも持っています。おそらく、どちらかだけで生きていくことはできないでしょう。それなら、少しでも優しく温かい心に従って生きていってほしいです。それを皆さんは賢明学院で学び身に着けたはずです。賢明教育はそれを目指してきたのです。自分の中にある「肝苦りさ」「スプランクニゾマイ」という感情をなくさないでほしいです。そんな思いを周りの人に、また目に見えない遠い人にも持てる人間になってください

51期の皆さん、賢明学院の卒業生として誇りをもって巣立っていきなさい。

自分たちが「地の塩、世の光」であることを忘れずに日々過ごしなさい。

皆さんの人生が愛と希望に溢れ、充実した毎日となることを祈り願って、私の式辞とします。