優しい心を育むカトリック教育

2021/03/16

中学校課程修了式

 

今日は中学校課程修了式が行われました。今回も在校生は出席せず,生徒,保護者,教職員のみで行いました。保護者の人数制限は行いませんでしたが,高校と同じように密にならない座席にしました。

私の式辞は次の通りです。

 

53期54名の皆さん,中学課程修了おめでとうございます。

保護者の皆さまもお子様の中学課程修了,おめでとうございます。ここまで成長され義務教育終了という節目を迎えられたお子様の姿をご覧になって感無量の想いではないでしょうか。

さて,3年生の皆さん,皆さんの中学生活の最後は新型コロナウイルスに翻弄され日々が1年以上続きました。休校やオンライン授業,登校できるようになってからもほとんどの行事も中止になりました。コロナの感染が私たちの生活を一変させてしまったのです。

先日,コロナ禍についてある神父様からこんな話を聴きました。新型コロナウイルスの出現は地球の悲鳴だと言うのです。そのような表現は今までにも聞いたことがありましたが,それに続く言葉に驚きました。がん細胞である人間に対する悲鳴だと言われました。がん細胞が人間をおかし,死に至らしめることがあるのと同じように,人間が地球を痛めつけ破壊していく,それに対する悲鳴です。人間をがん細胞にたとえる話を聴いたことなかったので少しショックでした。そんな表現をしなくてもいいだろうと思いました。しかし,よく考えてみると私たちが地球を死に追いやっていないと断言できるでしょうか。

皆さんはNHKスペシャルで3回放送された「2030 未来への分岐点」という番組を見たことがありますか。今,私たちは新型コロナウイルスのパンデミックだけでなく,世界規模の課題に直面しています。その中からこの番組では「地球温暖化」「人口爆発と食糧問題」「プラスティック汚染」を取り上げ,その現状と私たちが今後どのような選択をしていかねばならないか問いかけています。「分岐点」と言われる2030年までの10年間に自分たちの生活を見直し,そのライフスタイルを変えていかなければ取り返しのつかない未来になると警告しているのです。すでに始めている行動もあります。ビニール袋の有料化でマイバックを用意するなど,使い捨てを止めることの動きが起こっています。

10年間というと,皆さんはそのほとんどを学びの時間に使うのではないでしょうか。SDGsの問題を本格的に研究し,社会に貢献する人もいるかもしれません。自分にできる,世界を変えていく行動がしっかりできる大人になっている人も多いでしょう。世界へ飛び出して地球の危機をすくための活動をしている人もいるかもしれません。

フランシスコ教皇は2015年に出された回勅(教皇の指針を示す公文書)『ラウダート・シ』に「ともに暮らす家を大切に」と副題を付けられました。また,一昨年来日された時も,地球を「わたしたち共通の家」と呼ばれました。私たち一人ひとりが地球を「家」と意識できたならば,汚れていくのを放っておけないでしょう。壊れていくのを見過ごすことができないはずです。汚れれば家族で協力して掃除するでしょうし,壊れれば修理します。汚れている家を一層汚す人はいません。壊れているところをもっと破壊する人もいません。

賢明学院は建学の精神に「世界の平和と発展に自ら貢献できる人間を育成する。」と謳っています。ここでいう「発展」とは何でしょう。それはSDGs(持続可能な開発目標)を実現することです。SDGsも実は2030年を目標にしています。これからの10年,義務教育を終え自らの意思で学ぶ時期に入る皆さんにとって重要な時期ですし,私たちの家「地球」も大きな分かれ目の10年です。10年後これでよかったと言える選択と努力を重ねてください。

53期の皆さん,賢明学院中学校で学んだ者として誇りをもって次のステージへ進みなさい。

自分たちが「地の塩,世の光」であることを忘れずに日々過ごしなさい。

皆さんのこれからの生活が愛と希望に溢れ,充実した毎日となることを祈り願って,私の式辞とします。