優しい心を育むカトリック教育

2019/04/13

高等学校通信制課程入学式 式辞

37名の新入生の皆さん,ご入学おめでとうございます。

桜や春の花々が美しく咲き乱れる季節に,皆さんを迎い入れることができてうれしく思います。全員が出席できたことも大きな喜びです。

保護者の皆さまもお子様のご入学,おめでとうございます。賢明学院の制服に身を包まれ,新しいステージへ一歩踏み出されたお子様は輝いて見えるのではないでしょうか。

また,ご来賓として,長谷川会長をはじめ奉献会役員の皆様,リヴィエ会会長比嘉様,制服でお世話になっている椎山様,新入生を迎えるこの喜びの場にご臨席賜り,心から感謝申し上げます。今後とも,ご指導ご鞭撻をお願い申し上げます。

さて,新入生の皆さん,皆さんは今日の賢明学院の入学式を迎えるまでに,いろんな思いを抱えながら生活してきたかもしれません。しかし,ここが皆さんの居場所のある学校,安心できる学校になることを願っています。

賢明学院の通信制は3年前に産声を上げ,新入生の皆さんを加えて120名ほどの小さな学校です。だからこそお互いのことがよく分かり,学年を超えて仲良くなっていけます。最初は心を開くのも難しいかもしれません。人を警戒する気持ちもあるかもしれません。しかし,この優しさと温かさに満ちた学校で,生き生きと高校生活を送ってください。私は生徒たちの表情が明るく変化していくのを見ると,通信制を始めて本当によかったと感じます。

賢明学院は約2000年前,ユダヤに生きたイエス・キリストの生き方に倣いたいと考えるカトリック学校のひとつです。大阪では7校,全国でも高校は113校,通信制は3校しかありません。

また,賢明学院は約200年前フランスに生き,まさにイエス・キリストに倣いたいと生涯を教育にささげたマリー-・リヴィエの精神を根本におく学校です。エントランスに並んだ国旗は世界の姉妹校がある国々ですが,日本には姫路の賢明女子学院とこの堺の賢明学院2校だけです。

皆さんがこうして賢明学院に入学する今,世界で大きな話題になっていることがあります。それはブラックホールの輪郭の撮影に成功したというニュースです。記者会見の「これが人類が初めて目にするブラックホールの姿です。きれいな輪が見え真ん中が黒く抜けています。ブラックホールが光さえ出さないという事実が表われています」という言葉が印象的でした。ブラックホールとは重力が極めて強く、宇宙で最も速く空間を進む光を含むあらゆる物質を引き付け、のみ込んで脱出させない天体です。私は子どもの頃にブラックホールの存在を知った時,何もかも飲み込んでしまう恐ろしい怪物のように感じたのを覚えています。私が今日この話題を取り上げたのは,今まで見えなかったものが見えるようになった科学の進歩の素晴らしさと,それでも見えないものはいつまでたっても見えないという真理を話そうと思ったからです。

皆さんはサン・テグジュペリが書いた『星の王子さま』を読んだことがありますか。その中に「心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ。」という有名な一節があります。それは友情や愛のことを語っているのでしょうが,神様も目に見えません。目に見えないからないということでしょうか。そうなると空気も目に見えません。でも,空気があることは皆知っています。空気がなければ生きていけません。実は神様も同じです。

ある日,神様が姿を現して「私はいるよ」と言えば皆信じるかもしれません。でも,私は神様に姿を現してほしいと思っていません。私たちが毎日の生活の中で,「やっぱり神様によくしてもらっているなあ」と感じることが大切です。私はカトリック学校とは「友だちが寄り添う,先生が寄り添う,神が寄り添うことを実感できる学校」だと考えています。賢明学院の通信制課程に入学した皆さんが高校生活の中でそれを経験することを心から願っています。

そして,せっかく賢明学院と言うキリスト教カトリックの精神で教育されている学校に入ったのですから,イエス・キリストが何を教え,何を行い,どういう方か知ってほしいと願っています。

その一つとして,イエスがいつも寄り添ってくださる方であることを「あしあと」という詩で紹介します。

 

 

  あしあと

ある夜、わたしは夢を見た。

わたしは、主とともに、なぎさを歩いていた。

暗い夜空に、これまでのわたしの人生が映し出された。

どの光景にも、砂の上にふたりのあしあとが残されていた。

ひとつはわたしのあしあと、もう一つは主のあしあとであった。

これまでの人生の最後の光景が映し出されたとき、

わたしは、砂の上のあしあとに目を留めた。

そこには一つのあしあとしかなかった。

わたしの人生でいちばんつらく、悲しい時だった。

このことがいつもわたしの心を乱していたので、

わたしはその悩みについて主にお尋ねした。

「主よ。わたしがあなたに従うと決心したとき、

 あなたは、すべての道において、わたしとともに歩み、

 わたしと語り合ってくださると約束されました。

 それなのに、わたしの人生のいちばんつらい時、

 ひとりのあしあとしかなかったのです。

 いちばんあなたを必要としたときに、

 あなたが、なぜ、わたしを捨てられたのか、

 わたしにはわかりません。」

主は、ささやかれた。

「わたしの大切な子よ。

 わたしは、あなたを愛している。あなたを決して捨てたりはしない。

 ましてや、苦しみや試みの時に。

 あしあとがひとつだったとき、

 わたしはあなたを背負って歩いていた。」

 

皆さんの学校生活が愛と希望に溢れ,充実した毎日となることを祈り願って,私の式辞とします。