優しい心を育むカトリック教育

2019/11/30

BULLETIN 11月号② 「教皇フランシスコ来日」

本校の正面玄関のガラスに,先月からローマ教皇フランシスコ来日のポスターが貼ってありました。キャッチコピーは「あなたに,話がある。」です。確かに日本におられた4日間で多くのことを語られました。その内容は,来日テーマである「すべてのいのちを守るため」でした。

若い頃に日本での宣教を希望されていた教皇にとって,来日は夢の実現でした。ヨハネ・パウロⅡ世が来日されてから38年ぶり,38年前も「戦争は人間の仕業です。戦争は人間の生命の破壊です。戦争は死です。」で始まる平和アピールは反響を呼びました。今回は静かな語り口で,沢山のメッセージを伝えてくださいました。質素で気さくなお人柄もあり,カトリック信者だけでなく多くの人を魅了しました。長崎でも,広島でも,東京でも大歓迎でした。私も教皇ミサに与るか迷いましたが,BESTテストなどの行事もあり断念しました。でも,カトリック学校の仲間から送られてくるFacebookの写真を見ると知っている顔も多く,行けばよかったという思いはあります。

私にとって心に残った教皇の言葉は,やはり核廃絶を願う発言でした。まず,長崎では爆心地公園で「核兵器に関するメッセージ」を発表されました。そこでは長崎を「核兵器が人道的にも環境にも悲劇的な結末をもたらすことの証人である町」とし,「軍備拡張競争は,貴重な資源の無駄遣いです。」と断言されました。本来,資源は「人々の全人的発展と自然環境の保全に使われるべきものです。今日の世界では,何百万という子どもや家族が,人間以下の生活を強いられています。」と,「小さくされた人々」(社会的に弱い立場の人々)のことも言及されました。教皇の苦しむ人,悲しむ人に寄り添う姿は,被爆者や東日本大震災の被災者の皆さんとお会いになった時に強く感じました。特に印象的だったのは,福島原発事故で避難生活をしている高校生を優しく抱かれたシーンです。

長崎からその日の内に広島へ移動され,平和記念公園でスピーチされました。ここでは,さらに強い調子で核廃絶への発言がありました。「戦争のために原子力を使用することは,現代において,犯罪以外の何ものでもありません。人類とその尊厳に反するだけでなく,わたしたちの共通の家の未来におけるあらゆる可能性に反します。原子力の戦争目的の使用は,倫理に反します。核兵器の保有は,それ自体が倫理に反しています。」 宗教者として「倫理に反する」という表現まで使って,核廃絶を訴えられたのです。この言葉を世界の指導者は,私たち一人ひとりはどう聴いたのでしょう。さらに,地球を「わたしたち共通の家」と呼ばれたのは,2015年に出された回勅(教皇の指針を示す公文書)『ラウダート・シ』を意識されたと思います。その回勅の副題は「ともに暮らす家を大切に」というものでした。地球の環境問題にも積極的に発言されている教皇が,核戦争が壊滅的な環境破壊を起こすと警告されたのです。

今週の全校朝礼で高校中学とも教皇の訪日について触れました。テレビや新聞で知った言葉で心に残るものがあれば,それを自分で深めてほしい,生活に人生に生かしてほしいと話しました。その意味で,次の広島での言葉に応えることができればと願います。

「わたしたちは,ともに歩むよう求められているのです。理解とゆるしのまなざしで,希望の地平を切り開き,現代の空を覆うおびただしい黒雲の中に,一条の光をもたらすのです。希望に心を開きましょう。和解と平和の道具となりましょう。」