優しい心を育むカトリック教育

2019/11/13

BULLETIN 11月号 「堺ブランド桜『与謝野晶子』」

本校の校門入ってすぐの所に,マリア像と与謝野晶子の歌碑があります。歌碑には「少女子(おとめご)の 祈りの心 集まれば ましてマリヤの 御像(おんぞう)光る」という歌が刻まれています。この歌は歌集『瑠璃光』から取られたもので,歌碑建立の経緯などを事務長先生が調べてくださいました。この碑は写真にもあるように第29期の卒業記念品です。歌碑建立に当たり,当時のシスター秋田みゑ子校長はこう書いています。「賢明学院創立者 福者マリー・リヴィエは聖マリアへの強い信頼と崇敬をもち,何事を為すにも先ずマリアさまに尋ね,祈っていました。そして,シスターたちにも,生徒たちにもマリアさまへの強い信頼とマリアと共に祈り,イエス・キリストの愛を生きることを勧めていました。短歌の世界を革新した晶子の情熱とキリストへの愛へと燃え上がるマリー・リヴィエの熱意が重なり,マリア崇敬の類似点を見る思いが致します。」

脳溢血に倒れて病床にあった晶子が,死の2年前に当たる昭和15年(1940年)にカトリックの洗礼を受けたことを初めて知りました。次女七瀬,六女藤の信仰に導かれて洗礼を受けたそうですが,七瀬が受洗した時に詠んだ歌が13首残されています。実は本校の歌碑もその中の一首です。その他の歌をいくつか紹介します。

「栄華など 見も知らざるに おぼつかな 捨てんと神に 子の誓ふかな」

「堂の奥 天主の前に 進むなり 代母の被衣(かづき) わが子の被衣」

「或時は われよりよきを 知らねども 今日子に引かれ マリヤを拝す」

「われもまた 天主に子をば 奉る もの思ひする 人に似るなと」

「わりもなく 尼君達の 歌声に 涙流しぬ 子の死ぬるごと」

「わが女(むすめ) 聖者の御名を 受けたれど 花に似るかな うら若くして」

「われ知りて 知らぬさかひの ここちせず うらなつかしき 天主の御堂」

洗礼式の情景が目に浮かぶようです。母として娘の洗礼に戸惑う思いもありながら,信仰の世界に憧れを持ったのではないでしょうか。しかし,実際に洗礼を受けるまで,16年の歳月が流れました。そして,クリスチャンとなった晶子の歌が,堺で唯一のカトリック学校である賢明学院で歌碑になっているのです。

この歌碑がご縁となり,新品種に認定された堺ブランド桜「与謝野晶子」の苗を堺市から寄贈していただき植樹しました。1本は歌碑の左側,校門から見える所に,もう1本はマリア像右奥に植えました。この桜は濃紅色で情熱的なイメージを持っており,まさに「与謝野晶子」に相応しいものだそうです。何年後に花をつけるか分かりませんが,何十年後にはマリア像と歌碑を覆う樹に育っていることでしょう。