優しい心を育むカトリック教育

2020/02/10

BULLETIN 2月号 「きっかけ」

2020年最初のBULLETINです。この1年もどうぞよろしくお願いいたします。

昨年も年の初めの本紙で取り上げた話題の一つが大相撲でした。初場所で34歳2カ月という史上2番目の高齢で,玉鷲が優勝したことについて書きました。そして,今年は幕尻の徳勝龍が優勝しました。33歳5カ月の優勝は,日本人力士としては最年長だそうです。幕内最下位の幕尻力士の優勝は2000年春場所の貴闘力以来,奈良県出身では98年ぶりと驚きの優勝でした。関西人らしく優勝インタビューでは,「自分なんかが優勝していいんでしょうか?」「優勝は意識することないと言ったのは嘘です。めっちゃ意識していました。ばりばりインタビューの練習していました。」と爆笑コメントを連発しました。この1年ほとんど十両にいて名前も知られていなかった徳勝龍が,いっぺんに時の人になりました。では,優勝の原動力は何だったのでしょうか。それは母校である近畿大学相撲部の伊東勝人監督が急逝,その訃報を聞いて恩に報いるためにも優勝すると決意したそうです。千秋楽で貴景勝に勝って優勝を決めた時に涙を流したのも,インタビューで伊東監督のことに触れて涙を流したのも,恩師との深いつながり,感謝の思いがあったからだと思います。

人が変わるきっかけはいろいろあります。徳勝龍は恩師の死という悲しいきっかけでした。しかし,それに発奮して結果を残したのは誰にでもできることではありません。最下位の番付だったため上位の力士と当たったのが貴景勝だけという幸運もありました。でも,運を味方につけるのも実力の内とはよく言われることです。きっかけで人が変わる,人生が変わることは誰にでも起こることです。例えば,私が教師になったのも教育実習というきっかけがあったからです。私の場合,子どもの頃から先生になるのが夢というわけでもありませんでした。教職課程も取っておいて損はないだろう位の気持ちでした。それが教育実習で教えることを体験し,生徒と関わることによって大きく教師への道に傾いていきました。私は「宗教科」という特殊な科目でしたから,就職口が沢山あるわけではありません。幸いなことに実習へ行った学校から声をかけていただいて教師になることができました。40年間の教師人生を振り返って思うことは,教師という職業は神が私に一番望まれた仕事ではないかということです。小学生の頃の夢だったコックよりも,理科少年だった中学時代に将来の仕事として信じて疑わなかったエンジニアよりもです。

生徒指導で校長室に来る生徒がいます。その時に必ず話すのも「きっかけ」です。問題を起こさない方がいいに決まっています。しかし,問題を起こして指導を受ける生徒には,自分を変えるきっかけにしなさいと話します。それも周りの人や先生たちが「変わったな」と感じるような変化にしなさいと言います。人間は歳を重ねれば重ねるほど変わるのは難しいです。私もきっとそうだと思いますが,新しい気付きはよくあります。60代半ばでもそうなのですから,10代の生徒たちには気付くこと,何かのきっかけで変わることを願います。学校は失敗する場と言われることがあります。やり直しがきくところです。失敗を繰り返していては成長がありませんが,失敗をきっかけにすればいいのです。この1年,生徒一人ひとりの成長を楽しみにして見守りたいと思います。