優しい心を育むカトリック教育

2018/03/24

BULLETIN 3月号 「プロフェッショナル」

私はニュース以外ほとんどテレビを見ない人間ですが,毎週録画している番組がいくつかあります。テレビを録画できるようになって久しいですが本当に便利です。まず,録画すれば好きな時間に見れますし,保存しておくこともできます。それで,どの番組を録画しているかと言うと,NHKの「プロフェッショナル 仕事の流儀」です。

12日の放送では「地域医療 医師・長純一」さんが紹介されました。私はこの番組を見るまで長先生のことは全く知りませんでした。長野県の病院で勤務していた先生は,東日本大震災後に石巻に移り,仮設住宅内に診療所を作りそこで働いています。私自身は仮設住宅を訪れたことは数度しかありません。最初は震災の翌年に大槌町の仮設住宅へ,長崎の水産物を販売しに行きました。カトリック教会は東北各地にベースキャンプを作って支援活動をしましたが,大槌は長崎の教会が担当でした。そのため,長崎から水産物が定期的に送らており,格安の値段で販売していました。近畿のカトリック学校の生徒たちと仕事をしましたが,被災者の人たちからいろんな話を伺うことができました。南三陸町の仮設住宅で「お茶っこ」のボランティアもしました。これは主に女子生徒が集会所に来られるお年寄りにお茶を出したり,お話を聞いたりします。

長先生の話に戻りますが,先生はこのお話を聞くことをすごく大切にされていると感じました。単に病気を治すことより,心のケアを大切にされているのです。心の奥底にある誰にも打ち明けられなかった大きな痛みに,耳を傾けようとされているのです。震災から7年,復興が進んだようでかさ上げした土地に戻って来られる方も半分くらいだと,別の番組で報じていました。そして,心のケアを必要とされている方もまだまだおられます。「どんな時も そばにいる」が長先生の番組のタイトルでした。住民・患者に寄り添う医療に対して,全身全霊で打ち込む姿に心が震えました。この番組では毎回,最後にプロフェッショナルの定義が語られます。先生は「求められていることから逃げない,選ばないで受け入れて絶えずあらゆる面で努力すること」と話されていました。

私はこの番組を見て心に浮かんだのは,イエス・キリストの姿でした。イエスは当時の社会の中で見捨てられた人たちに,いつも寄り添いました。そして,イエスの持つ優しさ,暖かさ,柔らかさに,心に傷を負った人々が引き寄せられていきました。イエスの周りには,いつも安らぎがありました。宗教の原点は,この安らぎだと思います。奇跡でも教義でも掟でもなく,そこに心の居場所があり,安心できる場があることだと思います。キリスト教はそのようにして生まれました。そのことを忘れたくありませんし,教育の現場でも大切にしたいです。

最後になりましたが,この1年間,保護者の皆様の本校の教育に対するご理解,ご協力を心から感謝申し上げます。校長として不十分なところ,皆様のご期待に応えきれなかったところが多々あったと思いますが,保護者の皆様は暖かく受け止めてくださったと感じています。本当にありがとうございました。