優しい心を育むカトリック教育

2019/03/23

BULLETIN 3月号 「四旬節」

過日の保護者対象聖書講座で,イエスの十字架刑について話をしました。本校はどの部屋にも十字架像がありますが,それは当時のローマの極刑であった磔刑そのものではないようです。実際にはもっと残酷で屈辱的な刑罰でした。15年前に封切られた映画「パッション」は,イエスの肉体的苦痛を克明に描いて話題になりました。死刑を宣告されたイエスはまず鞭打ち刑を受けます。鉄の破片などを連ねた皮の鞭で,背中の皮膚はめくれ血まみれになります。そして,十字架を担いでゴルゴタの丘まで歩かれました。これも実際は横木を運ばれたと考えられています。刑場に着くと素裸にされ,釘で打ち付けられました。これも私たちが見ている十字架像は手のひらに釘がありますが,それでは体重を支えることができませんので手首に打ったようです。足は台に乗せて釘を打ったという説と足を横向きにくの字にさせ足首に打ったという説があります。身体を十字架に固定するために縄でくくられていたことも考えられます。どちらにせよ想像を絶する激痛の中で苦しまれ息を引き取られました。十字架刑の死因は窒息死です。ヨハネ福音書にイエスと共に十字架につけられた二人の足の骨を折ったと書かれているのは,足が体重を支えられなくなり窒息死させるためです。しかし,イエスはすでに死んでおられたので折らなかったと書いています。それまでに窒息死されていたか,失血死されていました。ところが,イエスの生涯はこの無残な十字架上の死で終わりませんでした。復活されたのです。復活が何かを100%説明することはできません。少なくともそれは仮死状態だったイエスが,息を吹き返したというのではありません。それなら,いつか死ぬわけです。しかし,「キリストは死を滅ぼし,福音を通して不滅の命を現してくださいました」(Ⅱテモテ1.10)と使徒パウロが書くように,生きておられるイエス・キリストに出会う体験を弟子たちがします。

このキリストの復活を記念するのが,復活祭(イースター・復活の主日)です。キリスト教の最も大切な祭日です。復活祭までの準備期間を四旬節と呼びます。四旬節は「40日の期間」という意味ですが,イエスが宣教を始める前に荒れ野で40日間断食をしたことに由来し,それにならって40日の断食をする習慣が生まれました。また,40という数字は旧約聖書の原点的体験「出エジプト」で,40年間荒れ野の旅を続けたことにもつながります。四旬節は復活祭の46日前の水曜日(灰の水曜日)から始まります(今年は3月6日でした。ちなみに復活祭も移動祝日と言って毎年変わります。春分の日のあとの最初の満月の次の日曜日が復活祭と決められています。これはイエスの十字架の死がユダヤ教の過越し祭の時期だからです。今年は例年よりも遅く4月21日です。)それは,主日(日曜日)には断食をしない習慣だったからです。

また,四旬節は3世紀頃から洗礼の準備の季節としてきました。この期間は洗礼を望む人だけでなく全教会の信徒たちがその人たちのために祈り,自分たちの洗礼の時を思い起こして洗礼の約束を更新する準備をします。洗礼の約束とは,自分中心の生き方から他者優先の生き方,言葉を変えるなら神が望まれる生き方に心の転換をすることです。それはまさにイエスの生き方にならうことです。十字架上で全ての人々のために命を投げ出してくださったイエスの受難と死を思い起こし,少しでもそれをまねようとする回心と償いの期間です。もちろん,生徒も保護者の方もほとんどがクリスチャンではありませんが,この期間に人へ優しさを表すことを普段より意識していただければと思います。暖かい愛の行いが,学校でもあふれることを望みます。

最後になりましたが,この1年間,保護者の皆様の本校の教育に対するご理解,ご協力を心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。