優しい心を育むカトリック教育

2018/07/26

BULLETIN 7月号② 「救出」

酷暑の毎日が続いていますが,本日1学期の終業式を迎えました。この1学期間,保護者の皆様の賢明教育に対するご理解,ご協力を心から感謝します。明日から始まる長い夏休み,生徒たちが目的をもって過ごすことを願います。

この2ヶ月,人を救うことで考えさせる出来事が続けて起こりました。まず,6月9日に起こった新幹線殺傷事件です。2人の女性を襲った加害者にひとりで立ち向かい,梅田耕太郎さんが亡くなりました。私がこの事件を知った時,その場にいたら自分はどんな行動を取れただろうかと考えました。梅田さんと同じようにできたと自信をもって言うことはできません。きっとその場にいればパニックになって,他の人と同じように逃げまどったのではないかと言うのが正直なところです。乗客の中にも冷静になって考えると,数人の男性が加害者を取り押さえれば梅田さんが亡くなることはなかったという思いを持つ人はいたでしょう。そして,逃げてしまった自分を責めている人もいるかもしれません。梅田さんを子どもの頃から知る人たちは,「耕太郎さんらしい」行動だと言っています。また,梅田さんがカトリック学校である栄光学園の出身で,イエズス会学校のモットーである“MEN FOR OTHERS,WITH OTHERS”の精神が根付いていたからだという報道もありました。「他者のために」は,賢明学院も同じ精神で教育しています。土壇場で他者のために働けるか,終業式で生徒たちにも問いかけました。

ほっと胸をなでおろした救出もありました。先月23日に行方不明となり今月10日に全員が救出されたタイ洞窟の少年たちの話です。2日に発見されてからも救出方法でずいぶん論議があったそうです。最終的には少年たちにダイバーが付き添い,水が溜まっている所は潜水しながら入口までの5キロを数時間かけて脱出しました。タイ海軍特殊部隊にイギリスの洞窟潜水救助専門家らが加わり,奇跡の生還を実現しました。救出活動中に潜水士が亡くなる悲しい出来事もありましたが,少年たちが無事に救出された朗報は世界を駆け巡りました。私が一番驚いたのは,発見されるまでの少年たちの冷静な行動です。コーチのエーカポル・チャンタウォンさんの適切なアドバイスもあったのでしょうが,少年たちはパニックにもならず洞窟の滴る水だけで生き延びた体験は想像を絶するものです。ここでも土壇場での力が問われているのでしょうか。

最後は今月の西日本豪雨です。200名以上の方が亡くなり,まだ行方不明の方がおられます。被災者の方々には心からお見舞い申し上げます。私たちも今月の粗食献金を支援のためにカリタス・ジャパンを通して送らせていただきます。過去に経験したことのない豪雨のために,土砂災害や洪水が起こりました。深夜に増水,氾濫,土砂崩れがあったために逃げ遅れた人もいました。被害後の必死の救出活動にも関わらず,死者が増えていくのはいたたまれない気持ちでした。何十年も大丈夫だった裏山が崩れたり,川が氾濫したことに対して被災者は「何で」という思いでしょう。「天災は忘れたころにやってくる」は寺田寅彦の言葉と言われていますが,私たちも備えの必要を痛感しています。大阪北部地震と西日本豪雨の教訓を本校も防災に生かしていきます。夏休み最後には教職員と奉献会の皆様の防災研修会が計画されています。数年前から緊急時の備蓄品は用意されていますが,本校も次の段階に進まねばと考えています。

ちょうど1ヶ月の夏休み,まず酷暑の中健康には十分留意して,勉強にクラブ活動に個人の体験にTHE BESTの精神で取り組み,全員が2学期の始業式に元気で登校できることを切に願います。

最後になりましたが,保護者の皆様も暑い毎日が続きます。どうぞ,ご自愛ください。