優しい心を育むカトリック教育

2016/11/24

BULLETIN 11月号 「震災復興」

9月の末に1通のFAXが届きました。それは宮城県南三陸町にある「カリタス米川ベース」を大阪教会管区が仙台教区サポートセンターから運営を引き継ぐという内容でした。日本のカトリック教会は全国を三つの管区に分け,さらに16の教区に分けています。大阪教会管区は名古屋・京都・大阪・広島・高松の5つの教区から成っています。東日本大震災から5年8ヶ月近くが過ぎましたが,まだまだ支援を必要としている人たちがいます。資金面の問題もあり東北から撤退するボランティアグループが多い中,カトリック教会は全世界から多額の献金が寄せられ今も活動を続けることができています。現在,宮古・大槌・釜石・大船渡・米川・石巻・原町・いわきと8つのカリタスボランティアベースがあります。この内,大船渡はすでに大阪教会管区が運営していました。

私が米川ベースに行ったのは4年前の夏でした。近畿のカトリック学校から生徒・教員合わせて36名が3ヶ所に分かれて支援活動を行い,本校の生徒も4名が参加しました。米川ベースは私を含めて6名が滞在しました。毎日,他のグループと共に南三陸町災害ボランティアセンターへ車に分乗して向かい,ここで作業ごとにミーティングがあり,現地へ向かいました。作業の内容は,瓦礫撤去,漁業支援,お茶っこ(仮設住宅集会所訪問)が主なものでした。東北とは言え,気温が30度を超す中での作業は3ℓの水分補給が必要なほどの過酷なものでした。下は水尻川での作業の様子ですが,日陰もなく軽い熱中症の人が出る中,皆で力を合わせて瓦礫を撤去しました。

被災地訪問2012.8.21

米川ベースの特徴は1グループの人数が6名までと制限されていることでした。申し込む時には融通を付けてほしいと感じましたが,全体で20名位のボランティアが実に親しくなれる雰囲気がありました。毎日毎日,違うメンバーになるのに,それが一つの共同体だと感じられるのです。もう一つの特徴は,毎朝6時半から「テゼの祈り」が行われることです。「テゼの祈り」とは,フランス・ブルゴーニュ地方の小さな村テゼにあるキリスト教の男子修道会で祈られている,沈黙と単純素朴な聖歌と聖書朗読から成る祈りです。テゼはカトリックとプロテスタントの教派を超えた共同体で,その魅力に惹かれた若者が世界中から集まります。それと共通する雰囲気が米川にはありました。近畿のカトリック学校はそれ以後も2回東北へ行きましたが,全員が同じ場所で活動することにしたため大船渡へ行きました。今回,運営母体が変わることで,米川の受け入れも変わるかもしれません。そうなると私たちのグループも全員米川に行けるかもしれませんが,あのベースが持っていた雰囲気がなくなるのは残念です。

 4月の熊本地震に続き,先月は鳥取でも大きな地震がありました。今は日本のどこで地震が起こっても不思議でないと言われています。大きな災害が起こらないのを願うばかりですが,東日本大震災以後,ボランティアに駆けつける人が増えたと思います。本校からも熊本へ行ってくれた生徒がいます。私は人間の最も深い欲求は,人に奉仕することだと思っています。それが実行できた時に大きな満足が得られるのです。「行って,同じようにしなさい」(ルカ10:37)は,私の一番好きな聖書の言葉ですが,助けを必要としている人のところへ行って,愛の行動が実行できる人間に生徒たちが育つことを心から願います。